「業務用EV = 疲れにくい」は本当? 85%の社員が実感も、裏に潜む航続距離の不安――医薬品卸大手のアンケートから考える

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医薬品卸大手アルフレッサは2025年1月、業務用EV45台を導入し、ドライバー41人を対象に疲労感や満足度の調査を実施した。回答者の85%が疲労軽減を実感し、静粛性や加速のスムーズさで高評価を得たが、調査は市街地中心の短距離運転に限られ、技術課題や運用面の課題も浮き彫りとなった。環境意識の変化は限定的で、経営判断としての脱炭素戦略とドライバー評価のズレも示唆される。導入効果の本格検証には、より多面的かつ定量的な分析が不可欠である。

「疲れにくい」85%の実感

アルフレッサが導入した業務用EV(画像:アルフレッサ)
アルフレッサが導入した業務用EV(画像:アルフレッサ)

 医薬品卸大手のアルフレッサは、2025年1月に電気自動車(EV)45台を業務用車両として導入した。これを機に、自社ドライバーを対象としたアンケートを実施。「EV運転による疲労感や勤務満足度の変化」に関する調査結果を、5月22日にプレスリリースで公表した。

 調査対象は配送や営業でEVを使用する41人。調査期間は2025年4月7日から18日。オンライン形式で実施された。設問は運転性、身体負担、ストレス、勤務満足度、環境意識の変化などを中心に構成されている。

●運転性に関する評価(5点満点)
・スムーズさ:4.61
・ハンドリング:4.34
・ブレーキ操作(回生ブレーキ含む):4.20
・静粛性:4.80

EVで最も満足している点として、「加速のスムーズさ」が27人、「静かさ」「燃料費の安さ」「振動の少なさ」が各4人、「環境貢献の実感」が2人に上った。

●疲労・ストレス・満足度
・疲れにくくなった(圧倒的 + やや):35人(85%)
・運転後のストレス低減(かなり + 少し):33人(80%)
・勤務満足度(運転の快適さ):4.38
・騒音の少なさ:4.46
・体力的負担軽減:3.59

●環境意識の変化
・「EVを通じて環境貢献を実感」:7割
・節電やごみ分別などへの意識が高まった:13人

●改善希望・課題(複数回答)
・航続距離の延長:17人
・充電時間の短縮:9人
・充電設備の増設:6人
・冬季の電力消費に関する不安:複数人(自由記述)

●EV業務の継続意向
・大歓迎:16人
・条件付きで歓迎:15人
・否定的または未回答:計2人

●回答者のプロフィール
・年齢層:50代が最多(13人)、次いで30代・40代
・EV運転経験:37人が「初めて」
・主な走行距離:全員100km未満(うち26人が50km以下)
・業務エリア:市街地中心が8割(高速道路・山間部での使用なし)
・EVに慣れるまでの期間:「すぐに慣れた」が過半数

●EV印象の変化

・「印象が良くなった」との回答が36人
・「変わらない」3人、「悪くなった」1人

一方で、今回の調査結果には複数の留意点がある。

 まず、ほとんどの回答者がEVの運転は初めてであり、初期導入バイアスがかかっている可能性がある。また、疲労軽減の効果を訴える声は多いが、比較対象となるガソリン車の利用状況や個別データは開示されていない。定量的な評価を行うには、裏付けが不十分だ。

 さらに、業務エリアは市街地に偏っており、高速道路や長距離移動の評価が含まれていない。1日の走行距離も短く、多様な運転条件を反映した結果とは言いがたい。

 加えて、調査対象は41人にとどまり、母集団の規模や属性も限定的だ。こうした条件を踏まえると、今回の結果のみでEVの全社導入を判断するのは難しい。今後は、より幅広い条件下での実証的な検証が求められる。

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