「業務用EV = 疲れにくい」は本当? 85%の社員が実感も、裏に潜む航続距離の不安――医薬品卸大手のアンケートから考える

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医薬品卸大手アルフレッサは2025年1月、業務用EV45台を導入し、ドライバー41人を対象に疲労感や満足度の調査を実施した。回答者の85%が疲労軽減を実感し、静粛性や加速のスムーズさで高評価を得たが、調査は市街地中心の短距離運転に限られ、技術課題や運用面の課題も浮き彫りとなった。環境意識の変化は限定的で、経営判断としての脱炭素戦略とドライバー評価のズレも示唆される。導入効果の本格検証には、より多面的かつ定量的な分析が不可欠である。

EV導入と経営目線の乖離

アルフレッサグループ環境方針(画像:アルフレッサ)
アルフレッサグループ環境方針(画像:アルフレッサ)

 回答者が満足したのは、車内の静かさや低振動、スムーズな加速といった点だった。これらはEVが持つ構造的な特性であり、エンジン車に対する優位性として設計段階から想定されている。

 一方で、疲労感に関する評価は、市街地での低速・短距離運転に限られていた。郊外や高速道路での使用実態は確認されておらず、そもそも疲労を感じるほどの運転だったのかという根本的な疑問が残る。

 加えて、疲労の定義はあくまで主観的であり、精神的ストレスや肉体的負荷、周囲の環境など、要因を分解した設問にはなっていなかった。EVに対する初期導入バイアスも無視できない。たとえば燃料補給の手間が減ったことや、新車導入による快適性の向上といった要素が、評価に影響した可能性がある。

 以上を踏まえると、「EVは疲れにくい」と結論づけるには材料が不十分であり、より多面的で定量的な検証が求められる。

 今回のアルフレッサによる業務用EV導入は、脱炭素化の流れを受けた経営判断と見るべきだ。保有コストの削減や補助金の活用、燃料費の抑制、CSR評価の向上など、経営上の打算が背景にある。

 一方で、アンケートはドライバーの快適性に焦点を当てており、経営側の導入目的とは軸がずれている。快適性の向上が離職防止や定着率改善に直結するかどうかは、今回の調査からは読み取れない。

 さらに、EVの導入が働きやすさや業務の生産性、サービス品質、配達効率といった指標にどう影響するかも明らかにされていない。EVが制度的な働きやすさの基盤となるかを判断するには、より広範なデータに基づいた分析が不可欠である。

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