自転車用「電動改造キット」急増? 設置わずか60秒で時速32km──天使か悪魔か? 事故リスクの現実を考える
ホンダが終戦直後に外付けモーターで歩み始めた電動自転車の歴史は、技術革新と制度の狭間で揺れる。中国で3.4億台超の普及を見せる一方、日本では法整備の遅れが安全性と市場の拡大に壁をつくる。電動コンバージョンキットの普及は都市交通と居住形態を変える潜在力を秘めるが、規制のグレーゾーンとインフラ整備の課題が今後のカギとなる。
日本の規制と法整備の壁
電動コンバージョンキットが米国で普及した背景は一筋縄ではいかない。
まず、米国の自転車文化はDIY精神の上に成り立っている点が大きい。さらに、米国の道路は日本よりも広く、電動コンバージョンキットなしでは移動が難しい事情がある。米国では自転車は「自宅のガレージで整備するもの」という意識が根強いことも押さえておく必要がある。
一方、日本人が海外のクラウドファンディングサイト『Kickstarter』や『Indiegogo』で電動コンバージョンキットに出資し、個人輸入することは現状でも可能だ。しかし、その製品を日本の法律に完全に適合させる道のりは極めて険しい。
どの省庁がイニシアティブを取るのかも不透明だ。国土交通省か警察庁か、それともスマホアプリを用いる先端技術製品としてデジタル庁か。日本特有の責任の所在の曖昧さが大きな壁となる。それを乗り越えたとしても、
・保険開発
・車体規格の制定
・有識者会議による道交法改正の検討
が待ち受けている。
さらに、日本では自転車は販売店で整備してもらうものという常識が根強く、この常識との衝突も避けられない。