自転車用「電動改造キット」急増? 設置わずか60秒で時速32km──天使か悪魔か? 事故リスクの現実を考える

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ホンダが終戦直後に外付けモーターで歩み始めた電動自転車の歴史は、技術革新と制度の狭間で揺れる。中国で3.4億台超の普及を見せる一方、日本では法整備の遅れが安全性と市場の拡大に壁をつくる。電動コンバージョンキットの普及は都市交通と居住形態を変える潜在力を秘めるが、規制のグレーゾーンとインフラ整備の課題が今後のカギとなる。

ロゴ使用で浮上した規制空白

電動自転車(画像:写真AC)
電動自転車(画像:写真AC)

 既存の自転車に、モーターやバッテリーを外付けした車両は、日本国内でも見かけるようになっている。

 しかし、こうした改造自転車で公道を走行すれば、道路交通法違反として摘発対象となる。これは電動キックボードやモペットと同様、基準を満たさない自走車両が日本で走行できるのは、あくまで私有地内に限られるためだ。

 一方で、日本の法制度はこうした改造自転車の存在を十分に想定していない。規制の網が曖昧なまま、販売や使用が見過ごされている現状がある。2024年10月17日付の時事通信ノ記事『アシスト自転車の改造部品販売で初摘発 ロゴ無断使用、商標法違反―大阪府警』によれば、こうした法の隙間を巡って全国初の摘発事例も報じられている。

「改造した電動アシスト自転車の部品などを大手メーカーのロゴとともにオークションサイトに掲載したとして、大阪府警は17日までに、商標法違反容疑で、会社員の男(52)ら3人を逮捕し、2人を書類送検した。府警によると、電動アシスト自転車の改造部品販売を巡る商標法違反容疑での検挙は全国初という」

 注目すべきは、今回の摘発が部品そのものの違法性ではなく、無断でブランドロゴを使用した行為に対するものだった点にある。すなわち、問題視されたのは海賊品販売に該当する点であり、電動アシスト自転車の改造部品そのものが違法とされたわけではない。イい換えれば、電動コンバージョンキットを含む改造部品は、現行法上は明確な位置づけを持たない。自転車と原動機付自転車の境界線を曖昧にする、いわばグレーゾーンにある。

 このような法制度の不備が、結果として自己責任による設置を可能にしているともいえる。使用実態が規制の網をかいくぐり、無秩序な広がりを見せている現状がある。

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