自転車用「電動改造キット」急増? 設置わずか60秒で時速32km──天使か悪魔か? 事故リスクの現実を考える

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ホンダが終戦直後に外付けモーターで歩み始めた電動自転車の歴史は、技術革新と制度の狭間で揺れる。中国で3.4億台超の普及を見せる一方、日本では法整備の遅れが安全性と市場の拡大に壁をつくる。電動コンバージョンキットの普及は都市交通と居住形態を変える潜在力を秘めるが、規制のグレーゾーンとインフラ整備の課題が今後のカギとなる。

免許不要が生む需要拡大

電動自転車(画像:写真AC)
電動自転車(画像:写真AC)

 電動自転車が世界各地で普及している。ここでいう電動自転車とは、いわゆる電動バイクのことである。ペダルを漕がずともモーターが車輪を駆動するタイプの乗り物だ。

 国によっては、もはや人力の自転車よりも電動タイプの方が生活風景に馴染んでいるケースもある。例えば、当媒体が2023年4月22日に配信した記事「日本とケタ違い! 中国の「電動バイク」保有台数3.4億台突破、コスパ抜群&エコ貢献 なぜ爆売れするのか?」(喜多崇由氏執筆)では、中国での普及状況が詳細に解説されている。記事によれば、同国ではすでに電動自転車が3.4億台を超えて走っているという。

 人気の背景には制度設計の影響もある。2019年、中国では電動自転車に関する国家基準の改訂版が施行された。最高時速25km、バッテリーを含む車両重量55kg以内、モーター定格出力400W以内、バッテリー電圧48V以内??この範囲内であれば免許が不要という扱いだ。これが、普及を後押しする要因となっているという。

 電動自転車という定義は広く、当初からその仕様で販売された製品に限らない。既存の人力自転車に電動コンバージョンキット(別の機能や仕様に変換・改造するための部品セット)を後付けするケースも数多い。現に、通販サイトで検索すれば、さまざまな外付けモーターキットが確認できる。

 この動きは中国に限らない。米国でもアプリ連動型の電動コンバージョン製品が注目を集めている。代表的な製品として挙げられるのが「LIVALL PikaBoost」だ。すでに第2世代が登場しており、最大出力は500W。一般的な自転車に最大時速32kmの速度性能をもたらす。最大の特長は「60秒以内で設置可能」という簡便性にある。専門知識がなくとも、誰でも手軽に電動化できる点が支持されている。

 米国の都市は、土地をふんだんに使った水平型の設計が基本だ。広大な移動距離をカバーするには、漕がずに進めるモペット型モビリティが不可欠となっている。

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