自動車の「脱出用ハンマー」が標準装備されない根本理由――水没時で命を救えるのに、なぜ?

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近年、台風や豪雨による車内水没事故が増加し、命を守る緊急脱出用ハンマーの重要性が浮き彫りとなった。だが国内の自動車では標準装備例が少なく、国交省も普及促進に動く。合わせガラスの採用率は主要メーカーで最大23%に達し、脱出の壁となる一方、保管場所やコスト、法的リスクも標準装備化を難しくしている。こうした複雑な課題を踏まえ、ユーザーの自主的な備えが求められている。

緊急脱出用ハンマーの必要性

車内のドアポケットに設置された緊急脱出用ハンマー(画像:写真AC)
車内のドアポケットに設置された緊急脱出用ハンマー(画像:写真AC)

 自動車が水没したり重大事故が起きたりした際、車内に閉じ込められるリスクは決して低くない。国土交通省が公表した資料によると、2019年の台風19号や2020年7月の豪雨で、車内の水没による死亡事故が相次いだ。こうした事態に備えて窓ガラスを割り脱出するための「緊急脱出用ハンマー」は命を守る重要なツールだ。

 近年の緊急脱出用ハンマーは、窓ガラスを割るだけでなく、シートベルトカッター機能を備えた製品も多い。コンパクトで持ち運びやすいタイプや、力の弱い人でも使いやすいバネ式のモデルなど、多様な市販品が流通している。

 しかし、日本の自動車で緊急脱出用ハンマーが標準装備されている例はごくわずかだ。ディーラーオプションや純正アクセサリーとして用意されていることはあるが、メーカー純正の標準装備として採用される例はほとんどない。

 なぜこれほど重要な安全装備が標準装備化されないのか。その背景には複数の要因が複雑に絡み合っている。本記事では具体的なデータや現場の課題を交え、詳しく解説する。

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