防衛省が超音速ミサイル「ASM-3」に見捨てた根本理由――カタログ・スペックで優れるのになぜ?

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防衛省が見切りをつけたのは“速さ”だった。マッハ3級の超音速型ASM-3では現代戦の要「突防」問題を突破できない。代わりに導入が進むのは、米国NSMを手本とした高度1m飛行のステルス亜音速ミサイル。迎撃回避性能に優れ、調達コストも据え置きの12式能力向上型が、冷静な合理性で選ばれた。

「高性能だからエラい」の誤り

 以上が防衛省が亜音速型の12式能力向上型導入を進めている理由である。そしてカタログ・スペックで優れる超音速のASM-3に見切りをつけた理由でもある。

 軍事趣味の界隈は「超音速だから採用すべき」との判断に偏りがちだ。カタログ・スペックの数字しか見ず

「超音速は亜音速よりもエラい」

と思い込みやすい。

 防衛省の技術部門にも似た傾向はある。「亜音速型の次は超音速」といった理系的な短慮の結果、ASM-3失敗に至った形だからだ。

 だが、現実の社会はそのような判断は許容しない。問題はなにか、それは本当に問題であるのか、その問題を解決するにはどうすればよいのか、その解決法はうまくいくのか。それが問われる。「超音速だからエラい」といった甘い考えは通用しないのである。

●参考文献
*1 雷剣ほか「美国NMESIS導弾武器系統反艦作戦能力評估分析」『火力与指揮控制』49(04) 2024年,pp.150-155.
*2 付健ほか「基於水幕的艦船紅外干擾策略研究」『応用光学』42(3) 2021年,pp.404-412.
*3 高暁光、揚宇「基於貝葉斯網的艦艇防空威脅評估」『戦術導弾技術』2020年4期,pp.47-70.

※ ※ ※

【著者より追記(2025年7月3日)】

 なお、掲載(2025年6月8日)後に読者から「防衛省はASM-3を見捨てたとの主張は誤りではないか。改良型であるASM-3Aの開発は継続されており、2024年度予算では納入のために118億円が計上されている。さらに射程延伸型のASM-3(改)の開発も継続中である」との指摘が寄せられました。

  ASM-3Aの配備については、記事の字数や構成上、省略した経緯があります。そのため、意図した主張が伝わりにくくなった可能性は否定できません。その点では誤解を招いたこと、お詫び申し上げます。

 ただし、こうした調達の継続は、日本の官僚組織における事業中止の困難さや、防衛費の急増に伴って予算の支出先を確保しようとする、近年の特殊な状況を背景とするものであり、防衛省がASM-3系列を重視し続けていることを示すものではなく、同時に亜音速型へのシフトという方向性も否定するものでもないと考えております。

 その意味で、防衛省が超音速対艦ミサイルからの撤退基調にあるという記事の見解と、ASM-3Aの形式上の調達継続とは、必ずしも矛盾するものではないというのが筆者の立場です。

 なにとぞご理解いただければ幸いです。

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