「車を直せない時代」が来る? 専門学校入学者「47%減」の衝撃――なぜ自動車整備士は「3K」イメージを払拭できないのか
自動車整備士は国家資格保持者が約33万人にとどまり、2011年以降4.6%減少している。専門学校の入学者は18年間で47%減少し、将来の人材枯渇が現実味を帯びている。車が生活必需品の地域での影響は深刻だ。業界は即効性の採用策に偏りがちだが、長期的な採用ブランディングと現場社員の協力が不可欠である。企業全体での体制整備が未来を左右する。
国家資格職の空洞化

「人が足りない」――。
今や業界を問わず、人材不足の声が上がっている。自動車業界も例外ではない。なかでも自動車整備士の不足は、深刻な局面に入りつつある。単なる採用難にとどまらず、日常生活にも影響を及ぼしかねない静かな危機が進行している。
自動車整備士は国家資格を必要とする専門職だが、その数は年々減少している。日本自動車整備振興会連合会の統計によると、2011(平成23)年に34.7万人いた整備士は、2022年には33.1万人となった(4.6%減)。一見すると微減に見えるが、より深刻なのはこれからの人材が減っている点だ。
整備士を養成する専門学校の入学者は、長期的に見て大きく落ち込んでいる。2003年度には1万2394人だったが、10年後には半数近くに減少。その後も回復の兆しはなく、減少傾向が続いている。背景には少子化もあるが、それ以上に整備士になりたいという若者が減っていることがうかがえる。2003年からの18年間で、高校卒業者は約21%減ったのに対し、整備学校の入学者は47%も減少した。
一方で、自動車の保有台数は年々微増している。特に公共交通が乏しい地域では、自家用車は生活の必需品だ。その車を安全に保つ役割を担う整備士の減少は、地域住民の暮らしにも直結する問題である。
人手不足がこのまま進めば、整備の予約が取りづらくなる。修理や車検にも長い時間を要するようになるだろう。
「車が直せない時代」
が、すぐそこまで来ている。企業の課題ではなく、社会全体が直面する危機と捉えるべき段階に来ている。