離島の定期航路が消える日──なぜ年間89億円の補助金は「採算度外視の命綱」を救えないのか?
国の補助が年間89億円に膨らんでも離島航路の赤字は止まらず、全国183億円規模に拡大。416の有人島にとって「命綱」である航路は今、制度疲労と採算不全の狭間で崩壊の瀬戸際に立たされている。自治体支援も限界に近づくなか、現行制度の抜本的見直しが急務だ。
離島航路の行政責任論

近年発達している新たな交通手段は、離島航路の課題解決に貢献するだろうか。
人手不足対策としては、無人運航の実証実験が各地で始まっている。ドローン配送も、医薬品や小荷物の輸送に限り、一部離島で実用化されている事例がある。
しかし、これらは赤字に苦しむ離島航路の根本的な解決策とはなっていない。船舶の無人運行はまだ実証段階にとどまる。ドローンも最大積載量が15kg前後であり、生活必需品や人の輸送には代替できない。
その一方で、長崎県五島市のように、従来の定期航路の一部をデマンド型運行(海上タクシー)に転換する試みも始まっている。これは国の補助対象にもなっている。
デマンド型運行は柔軟な運航が可能だ。小規模・少人数の移動に適しており、高齢者の通院などには一定の効果が期待されている。
ただし、この方式がすべての航路に適合するわけではない。特に通学など、定時性・安定性が重要な航路には向かない。高齢者のみが住む島では有効でも、一定の若年層が暮らす離島では定期航路が不可欠である。
実際、長崎県五島市の前島航路では、一日3便のうち1便のみ定期運航し、残り2便を予約制のデマンド運行としている。これは前島の人口が23人(2015年国勢調査)という小離島であるからこそ成り立つ特例に過ぎない。
結局のところ、小規模な例外を除けば、離島における定期・共通インフラとしての航路は不可欠である。その維持責任は行政が主体的に担うべきものだ。