離島の定期航路が消える日──なぜ年間89億円の補助金は「採算度外視の命綱」を救えないのか?
国の補助が年間89億円に膨らんでも離島航路の赤字は止まらず、全国183億円規模に拡大。416の有人島にとって「命綱」である航路は今、制度疲労と採算不全の狭間で崩壊の瀬戸際に立たされている。自治体支援も限界に近づくなか、現行制度の抜本的見直しが急務だ。
補助減で進まぬ黒字化改革

離島航路の補助制度は、もともと採算性確保が困難な航路への一時的支援として構築されたものである。しかし現在では、補助がなければ存続できない制度依存が常態化している。赤字体質を前提とした運営が制度的に固定化されつつあるのだ。
制度設計上、赤字であることが補助の前提となっているため、
「黒字化すれば補助が減らされる」
という逆インセンティブが働く。このため、民間航路でも経営改善への強い動機が生まれにくい。結果として、永続的な赤字補助で穴を埋める準公営的な運営が実態となっている。
それでも国や自治体は正式な公営化に踏み切らず、責任やコストを負うことを避け、補助金で延命させる姿勢を続けている。赤字航路の運営を地方自治体が引き受けることは、財政面や人員面で困難をともなうのが現実だ。
そんななか、例外的に主体的な取り組みを行った自治体もある。広島県尾道市は、尾道水道を挟んで向島と結ぶ2航路を第三セクター形式で引き継ぎ、運航継続を実現した。また、2023年には呉市の大崎下島と大崎上島町を結ぶフェリー航路が一時廃止届を出したが、最終的に呉市が赤字分を補助し、航路を維持している。いずれも自治体が
「準公営化」
を選択し、明確に関与することで維持されたケースである。しかしこれは、尾道市や呉市といった一定の財政的・行政的余力を持つ自治体だからこそ可能だった側面が強い。
実際には多くの自治体がそこまでの負担を引き受けられず、赤字の一部を補填する以上の対応に踏み切れない。その結果、離島航路は民間に委ねられたまま、常に消滅のリスクに晒されつつ、補助で運営されているのである。