リニア中央新幹線だけじゃない! 80年代、横浜で「世界初」営業運転があった! なぜ短命に? 幻の技術と夢の跡
1989年、バブル景気の熱気が生んだ“もうひとつのリニア”が横浜に誕生していた。JALが主導した磁気浮上式車両「HSST」は、最短2034年に延期された中央新幹線よりも先に、世界初の営業運転を果たしていた。その技術と幻の空港アクセス計画を辿る。
リニアモーターカーのもうひとりの挑戦者

1970年代、前述のように旧国鉄とは別に磁気浮上式リニアモーターカーの開発に取り組む動きがあった。それは、モビリティ業界の大手企業によるものである。といっても東急、小田急、近鉄、阪急などの私鉄大手ではなく、自動車メーカーのトヨタや日産でもない。航空業界の巨頭、日本航空(JAL)だ。
旧国鉄が進めていたのは、超電導磁気浮上方式を採用した超電導リニアモーターカーだった。一方、JALが開発していたのは、常伝導磁気浮上方式を採用するHSST方式だった。
超電導リニアは、超電導磁石を使って強力な浮上力を発生させる。浮上高さは10cm以上に達し、非常に高い安定性を持つ。ただし、液体ヘリウムや液体窒素といった冷却装置が必要になる。1970年代の試験運転では、最大時速517kmを記録した。
これに対し、HSST方式は常伝導磁石、つまり電磁石を使う。車両下部の電磁石とレール側に設置された誘導コイルの相互作用で浮上する仕組みだ。浮上高さは数ミリから1cm程度と低いが、冷却装置は不要だった。速度はシステムによって異なるが、構想では最高時速300kmを目標としていた。
HSST方式は超電導リニアに比べて速度こそ劣るものの、静かで、都市内の交通や短距離の移動に適した技術とされていた。