黒字化まで19年! 大江戸線延伸「採算神話」の正体とは? なぜ練馬区が実現に近づけたのか?
19年黒字化が示す現実」

流れが変わったのは、2016年に国土交通省の交通政策審議会が「鉄道ネットワークのプロジェクト」の検討結果を公表したあたりからだ。この報告では、光が丘から大泉学園町、さらに東所沢までの延伸に「意義がある」とされた。
一方で、大泉学園町~東所沢の区間については、事業性に課題があると明言された。また、延伸全体に関しても、「事業主体を含めた計画の十分な検討が必要」として、慎重な姿勢が示された。
ここで示された評価指標を確認しておきたい。
●光が丘~大泉学園町(単独整備案)
・延長:4.0km
・総事業費:900億円
・費用便益比(B/C):2.1~2.0
・純現在価値(NPV):563~519億円
・黒字転換年:開業から19年
●光が丘~東所沢(全体整備案)
・延長:12.1km
・総事業費:2300億円
・B/C:1.2
・NPV:311~240億円
・黒字転換年:33~36年
●大泉学園町~東所沢(単独整備案)
・延長:8.1km
・総事業費:1,400億円
・B/C:0.9~0.8
・NPV:▲121~▲157億円
・黒字転換年:発散(※将来にわたって黒字化の見込みなし)
これらの数値が意味するところを詳しく見ていく。
まず、光が丘~大泉学園町間に注目したい。B/Cが2.0を超えており、1円の投資に対して2円以上の便益があることを示す。インフラ事業としては非常に優良な水準だ。NPVが500億円を超えている点も重要である。将来の利益を現在価値で換算しても、大きな黒字が見込まれることを意味している。
最大の注目点は、黒字転換が開業から19年目という点だ。インフラ事業では、黒字化に数十年を要する例も多い。そのなかで、20年を切る見通しは、健全な事業採算性を裏付ける材料になる。
一方で、光が丘~東所沢の全体整備案は、B/Cが1.2と合格ラインにある。ただし、黒字転換までに30年以上を要するため、初期投資とのバランスを考えると慎重な見方が求められる。
さらに、大泉学園町~東所沢の単独整備案では、B/Cが1.0を下回っている。NPVもマイナス圏にあり、現時点では費用に見合う便益が見込めないと評価されている。単体での事業成立は難しいとされているのが実情だ。
こうした定量的な裏付けにより、延伸のうち「大泉学園町まで」の区間に関しては、採算性があるとして検討が進められることになった。
2023年3月、東京都の小池百合子知事は、都議会で新たに庁内に検討組織を設置する方針を表明した。大江戸線の延伸は、ついに実現可能性の高い事業構想へと移行したのである。