羽田空港アクセス線、田町付近はなぜ「複線化」しないのか? JR東が語らぬ謎――国家的プロジェクトの盲点を考える

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JR東日本は羽田空港アクセス線の工事で、田町駅付近に新たな分岐線を設けた。しかし地下区間は単線計画で、ダイヤ制約や将来の増便に不安が残る。複線化は本当に不可能なのか。

複線化が困難である理由

羽田空港アクセス線(画像:JR東日本)
羽田空港アクセス線(画像:JR東日本)

 第一に、移設対象の線路が他社、かつ国家の大動脈である点だ。特に田町駅付近の東海道新幹線は、大井車両基地への回送線との分岐がある。浜松町のような単純な移設では済まず、ポイントの移設や交換もともなう。JR東海にとっては、運行の安定性を最重視するエリアであり、容易に手を加えたくない場所である可能性が高い。

 また、単線トンネルの方が断面積が小さく、地盤沈下のリスクが抑えられるという技術的判断もあるかもしれない。もっとも、単線トンネルを2本にすればよいという反論も当然出てくる。

 次に、建設費を抑えたかったのではないかという点だ。羽田空港駅は、将来的に東京方面だけでなく、りんかい線や新宿方面からの乗り入れも見込まれている。それにもかかわらず、1面2線の構造では、本当に捌けるのか疑問が残る。実際、運行できる本数はかなり限られるだろう。

 営業線の直下で行う地下工事は、工期も費用もかかる。しかも、営業線の一部は他社が保有する。仮に単線区間がそれほど長くないとなれば、無理をしてまで複線化する動機は弱まる。

 とはいえ、5番目の質問にもあった複線化を見据えた設計がなされていないとすれば、それは問題ではないか。今回の回答は明確な説明を欠いたが、今後工事が進む中で、構造の実態が明らかとなり、複線化の可能性に関する見立てが進むことになるだろう。

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