羽田空港アクセス線、田町付近はなぜ「複線化」しないのか? JR東が語らぬ謎――国家的プロジェクトの盲点を考える
JR東日本は羽田空港アクセス線の工事で、田町駅付近に新たな分岐線を設けた。しかし地下区間は単線計画で、ダイヤ制約や将来の増便に不安が残る。複線化は本当に不可能なのか。
単線選択に滲む建設費の現実

物理的には、当初から複線で施工できそうに見える区間だ。では、東海道新幹線をずらしてでも複線にできなかったのか。JR東日本のコーポレート・コミュニケーション部に、次の5点を取材した。
●質問内容】
・JR東海へ協力を依頼し、東海道新幹線移設による用地捻出の検討はあったのでしょうか。
・JR東海側に線路移設の交渉はしていたのでしょうか。
・JR東海との交渉があった場合、合意に至らなかった理由はなぜでしょうか。
・単線整備によるダイヤ制約や運転整理面、ダイヤ乱れ時の影響の拡大などの懸念についてどのようにお考えでしょうか。
・今後複線化が必要になった場合に備えた設計や準備工事の予定(例えば東海道新幹線を潜るトンネル部の羽田側の坑口だけは複線の幅で施工するなど)はあるでしょうか。
1週間後、JRから回答があった。
「羽田空港アクセス線については、様々な検討を実施し総合的に勘案した結果、現在の計画に至っております。多くのお客さまに安心してご利用いただけるよう、運行計画等検討してまいります」
具体的な情報には踏み込めなかった。ただし筆者(北村幸太郎、鉄道ジャーナリスト)の見立てでは、複線化が困難である理由はいくつか考えられる。