神戸が「オワコン」なんて誰が言ったんだよ(怒)
神戸市は衰退しているという説に反論する。人口減少が進む中、中心部の人口は微増し、健全な財政と再開発の進展が都市の未来を支える。震災からの復興を経て、再生計画に注力する神戸市の現状と課題を探る。
再生の成否を握るニュータウン

このように、現在の神戸市が進めている戦略は、人口減少を前提とした成長を前提としない都市経営といえる。確かに、この現実に即した戦略には華やかさがない。
例えば、福岡市は「アジアの玄関口」を目指し、大規模な再開発を進めている。長崎市では西九州新幹線の開通を機に、都市再編が進められている。宇都宮市もLRT(次世代型路面電車)導入によって都市改造に踏み切った。これらと比べると、神戸市の戦略は地味で説明しづらい。派手なビジョンや象徴的なインフラに頼るのではなく、都市の縮小という現実の中で、どう暮らしを支えるかに徹している。
しかし、「神戸市はオワコン」といった言説がメディアやSNSで流れるのは、大きな誤りだ。たしかに、「株式会社神戸市」と呼ばれた時代と比べれば、目立たないかもしれない。だが、オワコンどころか、神戸市は全国の自治体がいずれ直面する縮小都市の現実に、いち早く正面から向き合っている。そして、持続可能性を着実に高めている。むしろ、大規模開発の時代、そして震災と復興の時代を経験した神戸だからこそ、できる戦略といえるかもしれない。
また、神戸市が地味な施策だけを行っているわけではない点も指摘しておきたい。2024年4月から、神戸空港の国際空港化を見据えたチャーター便が、アジア5都市との間で就航した。空港とJR新神戸駅を結ぶ自動運転バスの実証実験も行われている。さらに、ウォーターフロントでは「ジーライオンアリーナ神戸」が開業。周辺整備事業も進行中だ。
今後の成否を握るのは、ニュータウンの再生にほかならない。現在の施策で、果たして人口減少の流れを反転させられるのか。いまこそ、この都市再生の行方に注目すべき時である。