「北陸新幹線 = 無駄な公共事業」 20年前の批判は一体何だったのか? 未来予測の誤算、開業後の経済効果に衝撃! 地方再生を阻む「思考停止」とは

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北陸新幹線は「無駄な公共事業」だったのか? 2000年頃の識者の悲観論を覆し、開業後に沿線人口を激増させた「起爆剤」の真実。1980年代から続く新幹線批判の根底には、未来予測の限界と地方蔑視があった。富山、金沢の変貌は、新幹線がもたらす地域創生の可能性を示す。2024年、新幹線建設は「負債」から「資産」へと転換する。

地域間の意識差が生んだ誤算

北陸新幹線(画像:写真AC)
北陸新幹線(画像:写真AC)

 逆風のなか、北陸新幹線や九州新幹線の整備は進んだが、批判は続いた。例えば、両新幹線がスーパー特急ではなくフル規格(標準軌)で建設されることが決まった際、『日本経済新聞』は2000(平成12)年12月13日付社説で「状況をわきまえぬ整備新幹線の暴走」と厳しく批判した。

「今や破たんが明らかになったばらまき財政の亡霊がさまよっているようだ。政府・与党の整備新幹線検討委員会は北陸、九州両新幹線のほぼ全区間をフル規格で建設することを決めた。(中略)東海道新幹線並みのこの工法を採用すれば、スーパー特急などのやり方に比べ事業費は跳ね上がる。上越─糸魚川間など3区間の来年度着工に備え、運輸省は1500億円の予算を要求する。今年度に比べ4.3倍。公共事業費の見直しが議論される状況下で突出した伸びである」

ここで重要なのは、整備新幹線が「無駄な公共事業」と見なされる風潮が、大都市圏に偏っていたことだ。

 日本大学法学部新聞学研究所が発行する『ジャーナリズム&メディア』13号に掲載された大西正行氏の研究によると、当時の全国紙は、リベラル系・保守系問わず抑制的または慎重論を採る傾向があった。一方、地方紙は概ね「着工促進論」を展開していた。

 この地域間の意識のギャップは、メディアだけではない。例えば、北陸新幹線の富山―金沢間の着工を報じた『朝日新聞』2005年6月2日付の記事では、旅行業界大手JTBの見解を次のように紹介している。

「旅行業界最大手のJTBは「車窓を楽しむ旅と違い、新幹線では、一時的な効果はあっても、観光の起爆剤にはなりにくい」(広報室)とみる」

驚くべきことに、旅行業界でも北陸新幹線が観光客増加を長期的に見込んでいなかった。後に明らかになる現実とのギャップは、当時の予測がいかに限定的だったかを物語っている。

 結局、こうした批判や懐疑的見解はすべて的外れだった。批判を受けながらも、2015年3月、北陸新幹線は長野から金沢まで延伸開業を果たす。これにより、東京~金沢間の所要時間は3時間50分から2時間27分へと劇的に短縮された。

 この時間短縮は劇的な効果を生んだ。日本政策投資銀行の調査によると、上越妙高~糸魚川間の利用者数は、開業前の2014(平成26)年に約314万人だったが、2015年には約926万人に急増した。開業後も、コロナ禍前までは800万人台で安定していた。

 さらに注目すべきは、地域間の人の流れの変化だ。同調査によると、2014年と2017年を比較すると、富山県の首都圏との流動人口は240万人から328万人に、石川県は345万人から487万人に大幅に増加した。北陸新幹線は既存の需要を単に置き換えたわけではなく、新たな移動需要を生み出し、首都圏と北陸地方の結びつきを大きく変えた。

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