60兆円の経済効果! 「東名高速」が物流・産業に与えた革命的インパクトとは? 一方で「老朽化」のリアルと迫る維持費問題も

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東名高速道路は、開通から約56年にわたり、日本の経済を支える重要な役割を果たしてきた。物流から都市間移動、工業発展まで幅広い影響を与え、年間約60兆円の経済波及効果を誇る。しかし、老朽化やトラック駐車スペースの不足、環境問題など、今後の課題も多く、持続可能な運営のための革新が求められている。

沿道経済成長を牽引する東名

東名からはさまざまな物流センターや工場が見える(画像:都野塚也)
東名からはさまざまな物流センターや工場が見える(画像:都野塚也)

 東名は、貨物輸送から経済成長、工業立地に至るまで多大な貢献をしてきた。

 まず、物流業界への影響は非常に大きい。私自身、全国のさまざまな高速道路を走行したが、東名高速は他の路線に比べて大型トラックの数が圧倒的に多い。2015(平成27)年のデータによると、東名と名神は、日本の高規格道路を通過する貨物量の

「48%」

を担っている。これらふたつの路線は全体で日本の高規格道路のわずか7%の距離しかないにもかかわらず、この貨物量は非常に大きな数字である。東名が開通した1960年代後半から、日本の貨物輸送は自動車輸送が主流となり、実際に1969(昭和44)年には約484万tだった自動車貨物輸送量は、2009年には約3347万tに達している(592%増)。特に、東京と愛知・大阪間の貨物輸送は、東名開通後、7~8割がトラック輸送に頼り、東名高速を頻繁に利用するようになった。これが東名が支える物流の重要性を物語っている。

 沿道の経済効果も計り知れない。特に、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県の4都県は、東名高速の開通により大きな恩恵を受けた。1966年と2016年を比較すると、

・東京都の卸売販売額:約9.1倍
・神奈川県、静岡県、愛知県の卸売販売額:約7.9倍

に増加している。この地域は、日本全体の卸売販売額の約半分を占めていることから、東名の経済的影響は極めて大きい。また、工業分野でも、東名開通後に沿道地域の製造品出荷額は約7倍に増加し、特に愛知県豊田市では、世界的な自動車メーカーの成長も手伝って、開通前から14兆円以上の増加が見られるなど、地域経済の発展に大きな役割を果たしている。

 さらに、都市間移動の増加も顕著である。東名の開通によって、都市間移動が活発になり、その象徴的な例が高速バスの運行便数の増加だ。首都圏、静岡・中京圏、関西圏を結ぶ高速バスは、多くの人々に利用されており、現在でも鉄道や飛行機と並ぶ主要な交通手段となっている。そのなかでも、東名を経由する便が主軸を占めている。

 また、静岡市は東名のほぼ中間地点に位置しており、静岡市から他の都市への通勤・通学者が増加している。逆に、静岡市への通勤・通学者も増え、東名高速を活用した都市間移動が地域社会に大きな影響を与えていることがわかる。

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