バスは消え、タクシーは来ない…全国2割「移動難民」化の悲劇! なぜ「足」は奪われたのか? 【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(28)
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日本全国で進行する交通空白問題。マイカーと公共交通の移動格差が広がる中、2024年4月からタクシーを含む新基準が導入された。地域の実情に応じた対応が求められる中、今後の交通サービスの改善には何が必要か、注目が集まる。
移動格差拡大の現実

一般的には、駅やバス停留所からの物理的な距離によって交通空白地域が定められている。仮にオンデマンド交通の導入でこの空白が物理的に埋められたとしても、限定されたエリアや限定された時間帯での運行を余儀なくされた移動サービスの場合、そのサービスを程度で測れば、ゼロから低にほんの少し、上昇した程度にしか過ぎない場合も十分考えられる。
路線バス撤退後にオンデマンド交通が導入される地域も増えてきているものの、マイカーと公共交通の移動時間差が縮まるどころか、逆に移動格差が広がってしまったり、往復の移動コストが結果増加したりと、利害関係者との調整の結果、本来のオンデマンド交通のメリットを活かせない地域も多いと聞く。
近年議論されている交通空白地域の現状に関する審議会の資料などでは、駅から500m、バス停留所から300m離れた地域は、日本全体で人口当たり2割を超え、面積では5割を超えるそうだ。ただし、実際に鉄道やバスを利用している人の圏域はもっと狭いともいわれており、高齢者や子供、坂の有無や歩行環境の状況により異なり、一律に指定している実態は現状と乖離しているといわざるを得ない。
また、2024年4月の国交省通達「地域公共交通会議に関する国土交通省としての考え方について」では、恒常的に30分以内でタクシーが配車されない地域は交通空白地に該当することが条件として加えられ、地域の実情によっては短く設定することも可能となった。鉄軌道やバスに加えてタクシーも考慮することができることになったことで利害調整が従来よりも改善されることが期待される。一方でこれにより地方と同様に減便や廃止が生じている大都市では交通空白は実質存在しえないことになったともいえるのではないだろうか。