鉄道会社は「子育て」で生き残る? いまや共働き世帯「7割」時代! 駅ナカ保育園、小児運賃50円…子育てに相応しい交通環境はビジネスになるか
人口減少が進むなか、鉄道やバス事業者は沿線の活性化を迫られている。共働き世帯の増加により、通勤や子育て支援の需要が拡大。JR東日本の駅型保育園を皮切りに、私鉄各社も子育て支援施設を展開し、新たな収益源を模索する。学童保育や自習室の導入、低廉な小児運賃の設定など、多様な施策が進むなか、鉄道は地域社会と共存しながら成長できるのか。成功事例をもとに、公共交通と子育て支援の未来を探る。
子育て支援へのニーズの高まり

国内各地で人口減少が深刻な問題となっている。人口が減れば、鉄道やバスなどの公共交通が衰退し、店舗や学校の数も減少する。最終的には、まちそのものが消滅する可能性すらある。こうした状況のなかで、鉄道やバスの事業者は沿線の人口を確保するための競争に巻き込まれていく。
総務省の「労働力調査特別調査」(2001年以前)、「労働力調査(詳細集計)」(2002年以降)によると、1980(昭和55)年の時点で共働き世帯は約600万世帯、専業主婦世帯は約1200万世帯だった。しかし、2020年にはその比率が逆転し、
・共働き世帯:約1200万世帯
・専業主婦世帯:約600万世帯
となった。2021年のデータでは、共働き世帯の割合が全世帯の68.8%に達している。過去40年で、共働き世帯は大幅に増加したことがわかる。
この間、日本社会には大きな変化があった。1985年のつくば万博開催、1986年の男女雇用機会均等法の施行、さらにはバブル景気が、女性の社会進出を後押しした。しかし、バブル崩壊後、長期化する不況の影響で非正規雇用が増え、夫婦共働きでなければ生活が成り立たない世帯が増加した。それでも、多くの家庭は適切なタイミングで子どもを持ちたいと考え、厳しい状況下でも出産を望んでいる。
こうした背景から、子育て支援が充実している地域への移住を検討する家庭が増えている。鉄道やバスの事業者にとっても、共働き世帯の通勤需要や子どもの通学需要は重要なビジネスチャンスになり得る。子育て支援と公共交通の連携が、新たな事業の可能性を生むかどうか、注目が集まっている。