車検の制度「4月改正」で何が変わる!? 元ディーラーが明かす「先食い」横行の懸念! 現場は疲弊? 整備士不足の深刻度とは

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2025年4月からの車検制度改正が自動車整備業界に与える影響は大きい。車検を受ける期間が倍に延長される一方で、整備士不足や業界の負担軽減には限界があり、現場では依然として過重労働の実態が続いている。この改正が本当に業界を改善するのか、実際の声を交えた考察をお届けする。

営業と整備、噛み合わぬ現場

自動車ディーラーのイメージ(画像:写真AC)
自動車ディーラーのイメージ(画像:写真AC)

 視点を変え、実際の自動車整備現場の状況を確認してみよう。以下は筆者が以前勤務していたディーラーの、2025年2月中旬時点での状況をリポートしたものである。

 筆者が勤務していた店舗は大型店に分類され、当時は

・営業マン:8人
・メカニック:9人

が在籍していた(管理職は除く)。その頃、土日や月末など入庫日が集中する際、現場は整備の車両を捌ききれず、連日の残業が常態化していたことを思い出す。

 その店舗が約9年でどれほど変化したかというと、

・営業マン:6人
・メカニック:6人

に減少していた。メカニックはベテラン4人、若手ふたりの構成だが、若手は外国人スタッフだった。昼休憩中に当時からの知人であるメカニックに話を聞いたところ、

「毎年新人が配属されるが長続きしない。しかし、真面目な外国人メカニックに助けられている」

とのことだった。整備の現場は「3K(きつい、汚い、危険)職場」と呼ばれ、離職率が高いのが実情である。

 残っているメカニックは50代を超える人々が多く、2024年12月にはひとりが定年を迎え店舗を去った。通常であれば補充要員が入るはずだが、本社からの援軍は皆無だった。その結果、スタッフの休日を調整しながら業務を回すものの、五つの整備ピットにひとりずつ配置できない日も出てくるという。こうした状況から、整備入庫の台数を絞るなどして調整を余儀なくされていた。

 営業マンからすれば、必死に入庫させようと活動しているものの、それを捌く現場の人員が不足しており、顧客に迷惑をかける事態に陥っている。顧客側も、スケジュール調整をして整備入庫を希望しても、予約すら取れない場合が多い。ようやく予約を取れたとしても、状況によっては整備が予定通りに終わらないという悪循環が続いている。

 こうした状況は全国的に起きている現実であり、この問題が今回の制度改正へとつながったのではないかと筆者は推察している。

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