中国EV「独走」の裏側! 政府補助金、地方支援…内燃車より「4割安」のコストダウン、そして行きつく過剰生産の現実

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中国のEV産業は、政府の補助金依存から脱却し、価格競争力とサプライチェーン強化で新興市場を席巻。だが、国内経済の減速や貿易摩擦、地政学リスクが成長を左右する可能性もある。

内需低迷と輸出依存の歪

『新中国経済大全 資本主義と社会主義を超えて』(画像:日本経済新聞出版)
『新中国経済大全 資本主義と社会主義を超えて』(画像:日本経済新聞出版)

 では、このまま中国のEVの快進撃は続くのだろうか。未来の市場を予測することは難しいが、『ピークアウトする中国』が指摘するのは、供給能力は強いものの、国内需要が弱い中国経済のいびつな姿である。

 中国の経済政策の特徴は供給面の強化に偏っており、

「国内需要を刺激する政策」

が弱いことである。コロナ禍においても日本や米国が国民への現金給付へと踏み切るなかで、中国の経済対策は

・5G基地局整備
・データセンター
・都市間鉄道

などの新インフラの整備など、供給面を強化するものが目立った。もともと中国では社会保障制度が貧弱なこともあり、国民の貯蓄率が高く、消費が弱いのだが、近年の政府の政策を見ても国内消費を喚起する政策は弱く、供給に比べて需要は弱いままになっている。

 結果として、生産された製品は輸出へと回るが、中国製品は世界市場を見ても過剰生産になっているケースがある。太陽光パネルでは中国企業が世界の需要の2.5倍の供給能力を持つといわれており、圧倒的な国際競争力を持つ企業でも赤字に陥っている。

 自動車メーカーの稼働率も2017年の62%から2023年には48%まで低下しているといわれ、ここでも過剰生産からの業績悪化が懸念される。中国の産業の躍進が、必ずしも個々の企業の体制の強化にはつながっていない面もあるのだ。

『ピークアウトする中国』と『新中国経済大全』は、ともに中国経済の強みと弱みの双方を分析した本である。EVの今後に限らず、中国経済の行方に関心のある人には一読をお勧めしたい。

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