中国EV「独走」の裏側! 政府補助金、地方支援…内燃車より「4割安」のコストダウン、そして行きつく過剰生産の現実
中国のEV産業は、政府の補助金依存から脱却し、価格競争力とサプライチェーン強化で新興市場を席巻。だが、国内経済の減速や貿易摩擦、地政学リスクが成長を左右する可能性もある。
データ活用で進化する中国EV

このような形で価格競争力を身につけた中国製EVだが、先述のニーオのような例もあるので、官民あげてのさらなる新規参入が続き、製造コストも下がっていく。そして、大量に生産されるようになったEVは国内市場だけでなく、海外にも輸出されていく。
大きな国内市場をもつ中国では、ポール・クルーグマンやエルハナン・ヘルプマンが見出した
「自国市場効果」
が働く。これはある産業について大きな国内市場を擁する国には、その需要を満たす以上の企業が集積し、その結果として比較優位を持つようになるというものである。こうしたことから、現在の中国のEVの輸出攻勢を
「補助金のおかげだけだと考えるのは不適当」
で、中国が一定の比較優位を獲得しているからだと考えられる。また、『新中国経済大全』では、中国の国内市場の大きさにともなう利点としてビッグデータの入手が容易であることを指摘している。
今後の自動車産業において、自動運転の実用化をはじめとしてデータの収集と活用がひとつのカギになってくると考えられるが、同時にデータの戦略的価値が認識されるとともに
「国境を超えたデータの移動」
が難しくなってきている。しかし、中国メーカーは国内で大量の情報を収集することができ、しかも現在のところ中国人のプライバシーに対する意識はそれほど高くない。データの収集において中国メーカーは大きなアドバンテージを持つ可能性があるのだ。