「お客様第一」の終焉? カスハラ主犯は「50代以上の男性」――小田急電鉄が全70駅にボディカメラ導入、その理由とは
カスハラ1513件、被害者の15%が深刻化――現場の限界が制度を動かした。小田急電鉄は全70駅にボディカメラを導入し、記録と抑止でサービス維持に踏み込む。技術で守る現場と、変わる「客と事業者」の関係を追う。
鉄道経営を揺るがす「カスハラ」への防衛投資

カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」は、いまや国が解消に乗り出すほど深刻な影を落としている。働く人を守るルールである労働施策総合推進法が変わり、会社側には被害を防ぐための手立てを講じる義務が課されるようになった。
そもそも、切符を買って電車に乗るという行為は、法律で見れば売り手と買い手が対等な立場で結ぶ約束事に過ぎない。支払った運賃を超えた無理な注文に応じる必要など、本来はないはずだ。
こうしたなか、鉄道各社も重い腰を上げ始めた。対策の土台にあるのは技術の進歩だ。小田急電鉄は駅員が身につけるボディカメラ、いわゆるウェアラブルカメラを全駅に持ち込んだ。警察官が装備するイメージが強いが、いまや民間企業が現場の人間を不当な攻めから守るために使う、欠かせない道具になりつつある。
背景には、働き手が減り続けるという切実な事情がある。駅員の心と体の安全を守り抜くことは、日々の運行を止めないために避けては通れない投資だ。鉄道サービスは決して無限に湧き出すものではない。適切な決まりがあってこそ成り立つものへと、その姿を変えている。
理不尽な振る舞いを見過ごせば、事業そのものが立ち行かなくなる恐れさえある。駅で実際に何が起きているのか。その実態を掘り下げ、各地で広がる条例制定の動きとともに考えていきたい。