中国EV「独走」の裏側! 政府補助金、地方支援…内燃車より「4割安」のコストダウン、そして行きつく過剰生産の現実

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中国のEV産業は、政府の補助金依存から脱却し、価格競争力とサプライチェーン強化で新興市場を席巻。だが、国内経済の減速や貿易摩擦、地政学リスクが成長を左右する可能性もある。

補助金依存からの脱却

「BYD SEALION 7」(画像:BYDジャパン)
「BYD SEALION 7」(画像:BYDジャパン)

 まず、多くの人の頭に浮かぶのは政府からの手厚い補助ではないだろうか。実際、『ピークアウトする中国』によると中国政府はEVの普及のためにさまざまな補助を行ってきた。

 中国政府は2010年からNEV(新エネルギー車。電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車の総称)の購入に補助金を支給する振興策を始め、2016年には一部都市でナンバープレート取得優遇措置も導入された。

 北京や上海などの大都市では渋滞対策としてマイカーの購入が制限されており、ナンバープレートは抽選やオークションで手に入れる必要があったが(上海市のオークション価格は近年では8万元(約160万円)を超える価格)、NEVならばこれが無料で手に入ったのだ。

 これだけの優遇策が提示されればEVが普及するのも当然だと考えるかもしれないが、これだけの支援があっても10年ほどは中国でEVは売れなかった。大規模な補助金詐欺も摘発され、購買補助金は次第に引き下げられていったこともあり、2020年ごろまでは低迷するEVメーカーも多かったという。

 しかし、2021年から局面が変わった。それまで100万台強で停滞していたNEVの販売台数は2021年に352万台、2022年に689万台、2023年に959万台と一気に増えていった。この時期はちょうどコロナ禍とも重なっているが、この頃から消費者が

「EVの方が安い」

という認識を持つようになり、車を選ぶ際の選択肢の筆頭にEVがあがるようになったのだ。

 中国のEVは2018年の段階では内燃車に比べて16%高かったが、2022年の時点では14%安くなった。特に小型車は2018年の段階では71%割高だったが、2022年の時点では

「37%割安」

になっており驚異的なコストダウンが進んでいる。燃料代(電気代)を比べてもEVの方が安く、コロナ禍以降消費のダウングレードが進むなかで「安いEV」が選ばれている状況がある。

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