「鉄道会社は民間企業だから」赤字ローカル線の議論を妨げる“思考停止”ワード! ネット議論を支配する“0.23%の声”とは

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赤字ローカル線の存廃問題は、単なる経済的な問題ではなく、地域社会の未来を左右する重要な課題だ。ネット上での議論は、特定の意見が目立つ一方、広範な意見交換の場が不足している。10万人規模の調査によると、ネット投稿の約半数はわずか0.23%の人々によって書き込まれ、その影響力は大きい。この問題に対する多様な視点が求められている。

採算重視が生む歪み

ローカル線(画像:写真AC)
ローカル線(画像:写真AC)

 ネット上での議論では、「鉄道は採算が取れなければ廃止すべきだ」という意見が多く見られる。この論理は一見合理的に思えるが、実際にはその前提に問題があることが少なくない。

 まず、公共インフラの価値を「利益」で測るべきかという点である。鉄道は単なるビジネスではなく、地域の生活基盤そのものである。道路や上下水道、警察、消防といったインフラと同様に、収支だけで存続の可否を決めるべきではない。例えば、赤字だからといって過疎地の消防署を廃止することはあり得ないが、鉄道に関しては「採算重視」の意見が強くなる。

 次に、JRの民営化以降、鉄道は「営利企業の事業」として認識されやすくなった。特に都市部の鉄道は利益を出しているため、

「鉄道 = 儲かるなら存続、赤字なら廃止」

という考え方が広まった。しかし、鉄道は元々国が整備した社会インフラであり、「儲かるかどうか」を唯一の基準にするのは短絡的である。さらに、日本社会には

「自分で何とかするべき」

という価値観が根強くある。そのため、ローカル線の問題も「沿線住民が利用しないのが悪い」「自治体が負担すべき」といった論調に偏りがちである。しかし、公共交通は地域単位で成り立つものではなく、広域的な視点での議論が必要である。

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