「鉄道会社は民間企業だから」赤字ローカル線の議論を妨げる“思考停止”ワード! ネット議論を支配する“0.23%の声”とは

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赤字ローカル線の存廃問題は、単なる経済的な問題ではなく、地域社会の未来を左右する重要な課題だ。ネット上での議論は、特定の意見が目立つ一方、広範な意見交換の場が不足している。10万人規模の調査によると、ネット投稿の約半数はわずか0.23%の人々によって書き込まれ、その影響力は大きい。この問題に対する多様な視点が求められている。

鉄道存廃問題を語る層の違い

ローカル線(画像:写真AC)
ローカル線(画像:写真AC)

 ネット上での議論は、意見を表明する動機を持つ人たちによって主導され、そのため発言者は限られている。

 経済学者の田中辰雄氏と浜屋敏氏が実施した10万人規模の調査によると、「ネット上での投稿の約半数」は実際にはわずか0.23%の人たちによって書き込まれていることが明らかになっている。この0.23%は

「435人に1人」

という割合であり、その発言者の「特殊性」が際立つ。さらに、過激な意見を発信する人たちは「高齢者」に多いことが示されており、炎上に参加するのは「40万人に1人」という極めて少数派に過ぎない。ヤフーニュースやX(旧ツイッター)などに積極的にネガティブコメントを書き込んでいる人たちは、自らの「特殊性」にそろそろ気づいたほうがいい。大多数はサイレントマジョリティーなのだ。

 さて、ローカル線の存廃問題に強い発言力を持つ層は、

・経済的観点で鉄道を語る層
・自家用車を主に利用する層
・自己責任論を強く持つ層
・冷笑的、懐疑的な態度を取る層

などだ。経済的観点で語る層は、企業経営の視点から採算性を重視し、「赤字なら廃止すべき」と考える。自家用車を利用する層は車社会に適応しているため、鉄道の必要性を感じにくい。自己責任論を強く持つ層は、地方の衰退をその地域の「努力不足」と捉え、鉄道維持の責任を利用者や自治体に負わせる。一方、冷笑的、懐疑的な態度を取る層は、「鉄道存続を求める人は自分で乗っていない」といった矛盾を指摘し、揶揄する傾向がある。

 しかし、ネット上には意見を表明しにくい層も存在する。普段からローカル線を利用しているがネットに書き込む習慣がない人たちや、交通政策に関心がありながら議論に参加しない人たち、鉄道の存続を願っているが批判を恐れて沈黙する人たちがこれに該当する。

 要するに、ネット上で目立つ意見は、発言する人たちのバイアスがかかっているため、現実の世論を必ずしも正確に反映しているわけではない。

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