「ごめん、先に○○行ってるね」 消えた駅の伝言板! 昭和の恋はなぜスリリングだったのか?
かつて駅の改札付近に存在した伝言板。携帯電話の普及とともに姿を消したこの「待ち合わせの場」は、移動する人々の絆とドラマを映し出していた。現在、デジタル化が進むなかで、失われたものとは何か、駅の伝言板が描いた恋愛の風景とその変化を探る。
駅に置かれた「愛のインフラ」

駅は本来、「約束の場」だ。人が移動する以上、誰かとどこかで落ち合う必要があり、その調整手段として伝言板が機能してきた。
特に、通信手段が固定電話に限られていた時代には、急な予定変更を伝える手段は限られていた。電報は高価で、公衆電話には長蛇の列ができることもあった。そんななか、駅の伝言板は「書きさえすれば、必ず相手が目にする」可能性のある、数少ない手段だった。
恋人たちは、待ち合わせ場所がうまく伝わらなかったときや、急な用事が入ったときに、伝言板にメッセージを残した。
「ごめん、先に○○行ってるね」
「喫茶○○まで来て」
「1時間待ったけど先に帰ることにしたよ」
「xyz」
その文字の向こうには、会えるかどうかの不安と、それでもつながりたいという願いがあった。伝言板は単なる連絡手段ではなく、恋愛のゆらぎを映し出す鏡でもあった。