「対等」から一転、ホンダが「日産子会社化」を打診! 統合の行方は? EVシフトを制するための大胆な一手、その合理性と課題とは
子会社化に向けた論点と課題

子会社化に向けた論点と課題を整理する。
日産社内での反発と「対等性」の問題は避けられない。これまでの統合協議では「対等な関係」が重視されてきたが、ホンダによる子会社化案はその前提を大きく変えるものとなる。日産にとって、かつてルノーとの関係で「支配される側」となった経験は記憶に新しく、再び他社の傘下に入ることへの抵抗感は強いだろう。経営陣や労働組合のみならず、長期的な企業文化の観点からも慎重な議論が求められる。
日産は経営再建の途上にあるものの、依然として世界市場で一定の競争力を持つメーカーであり、ホンダの意向に沿う形での統合には慎重にならざるを得ない。仮にホンダが子会社化を進める場合、日産側の経営陣や株主が対抗策を講じる可能性も考えられる。
統合による相乗効果についても、見通しは必ずしも明確ではない。ホンダと日産は企業文化や経営スタイルが大きく異なる。ホンダは独立性を重視し、エンジニア主導の文化が根付いている。一方で日産は、長年のアライアンス経営を通じてグローバルな戦略調整に強みを持つ。こうした違いが統合後にどのように影響するかは慎重に見極める必要がある。
技術面でも課題は残る。EV分野では日産の技術を活用できるとしても、内燃機関やハイブリッド技術に関しては、ホンダの強みをどのように生かすかが重要になる。ただ統合するだけでは十分なシナジーは生まれず、明確な方向性を持った戦略が求められる。
資本市場の評価やM&Aのハードルも考慮しなければならない。ホンダが日産の株式を取得するには大規模な資本投下が必要となる。財務的に実行可能ではあるが、投資家がこの動きをどう評価するかは未知数だ。日産買収による経営リスクの増大を懸念し、市場が慎重な姿勢を取る可能性もある。
また、日産の大株主であるルノーの動向も影響を与える。現在、ルノーは日産株の一部を売却し関係の見直しを進めているが、ホンダによる子会社化が具体化すれば、新たな対応を迫られる可能性がある。ルノーがこの動きを歓迎しない場合、M&Aのプロセスがさらに複雑化することも考えられる。
こうした諸課題を踏まえると、ホンダによる日産の子会社化は単なる買収にとどまらず、長期的な視点での調整と戦略が不可欠となるだろう。