駅前商店街が没落し、私たちは「何」を本当に失ってしまったのか? 利便性の陰で消えた「街の色」を考える

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郊外型ショッピングセンターの台頭は利便性向上に寄与する一方、地域の個性や商店街の役割を失わせた。駅前商店街が衰退し、車社会が進行する中で、私たちはどんなものを得て、何を失ったのか。新たな都市のあり方を考える時が来ている。

郊外ショッピングの勝利と課題

寂れた商店街のイメージ(画像:写真AC)
寂れた商店街のイメージ(画像:写真AC)

 ある地方都市の駅前に立ち寄ったとき、街は閑散としていた。シャッターを下ろしたままの店が並び、歩いている人の姿も少ない。その一方で、郊外型ショッピングセンターの駐車場は満車で、家族連れや若者たちが賑やかに買い物を楽しんでいる。この光景は、今や日本全国で見られる現象となっている。

「商店街の衰退は時代の流れだから仕方がない」

と考える人は多い。確かに、経済的な観点から見ると、郊外型ショッピングセンターの方が利便性が高く、低コストで効率的な運営が可能だ。駐車場も完備され、広いスペースで天候に関係なく買い物ができる。一方、駅前の商店街は老朽化し、車でのアクセスも悪いため、維持が難しくなった。

 しかし、この現象を単なる「時代の変化」として片付けてしまってよいのだろうか。

 本稿では、駅前商店街の衰退と郊外型ショッピングセンターの台頭によって、私たちがどんなものを得て、どんなものを失ったのかを考え直したい。結論から言えば、私たちが最も失ったのは「街の文脈」「街の色」だ。そして、この喪失こそが、地域の未来に深刻な影響を与えている。

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