広島と愛媛の「この場所」に、なぜ橋を作らないのか?
離島架橋は地域振興のカギとなるが、広島県の芸予諸島の未完成架橋計画が示すように、単なるインフラ整備では効果が限られる。都市の活性化と広域的な交通ネットワーク構築が求められる。
離島経済を変える架橋戦略
離島架橋は、日本の国土開発における重要な施策のひとつだ。筆者(碓井益男、地方専門ライター)はこれまで当媒体で、全国各地の架橋構想を取り上げてきた。
日本は6852の島々からなる島国であり、政府は幹線道路の整備にとどまらず、離島と本土を結ぶ架橋事業を積極的に推進してきた。この方針は現在も継続しており、むしろ強化される傾向にある。実際、国会で議論中の離島振興法の改正案では、基本方針に橋梁整備の実施が明記される予定だ。
こうした架橋政策は、すでに多くの離島で成果を上げている。例えば、長崎県の平戸大橋は平戸島と本土を結び、平戸市の経済・生活基盤を支えている。和歌山県串本町の大島では、くしもと大橋の開通により、住民が24時間いつでも本土との往来を可能とした。直近では2024年12月、宮城県女川町で出島と本土を結ぶ「出島架橋」が開通。女川町の漁獲量の約4分の1を占める沿岸漁業の拠点である出島の利便性が大幅に向上した。離島と本土の一体化は、今なお着実に進められている。
架橋による効果は、単なる移動の利便性向上にとどまらない。具体的には、以下のようなメリットが期待される。
・離島地域の後進性と隔絶性の解消
・24時間移動可能な陸上交通の確保
・医療、福祉、教育、産業の向上
今後も離島の発展には、架橋を含むインフラ整備が不可欠だ。本土との接続を強化することで、地域の持続可能な成長が実現するだろう。