駅前商店街が没落し、私たちは「何」を本当に失ってしまったのか? 利便性の陰で消えた「街の色」を考える

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郊外型ショッピングセンターの台頭は利便性向上に寄与する一方、地域の個性や商店街の役割を失わせた。駅前商店街が衰退し、車社会が進行する中で、私たちはどんなものを得て、何を失ったのか。新たな都市のあり方を考える時が来ている。

買い物体験の変化がもたらした影響

寂れた商店街のイメージ(画像:写真AC)
寂れた商店街のイメージ(画像:写真AC)

 商店街には、それぞれの店が独自の個性を持っていた。八百屋が選び抜いた旬の野菜や、老舗和菓子屋の季節限定銘菓、雑貨屋の隅に並ぶ手作りの小物など、各店は地域の歴史や文化と結びつき、独特の空間を形成していた。

 しかし、郊外型ショッピングセンターでは、全国チェーンが中心となり、商品もどこに行っても似たようなものが並ぶ。東京、名古屋、福岡など、どの地域でもイオンやイトーヨーカドー、ユニクロ、ニトリなどおなじみの店舗が並び、地域性は薄れてしまった。

 この変化は、単なる商業施設の進化ではない。商店街は、各店が「この地域ならではのもの」を提供し、買い物客もそのなかで地域の特色を感じ取ることができた。しかし、郊外型ショッピングセンターの普及により、「その街ならではの買い物体験」が急速に失われつつある。

 確かに、ショッピングセンターは快適だ。広い駐車場とワンストップで完結する買い物の利便性は大きな魅力だが、その便利さの代償として、「街の文脈」「街の色」を失っているのではないかという点も考慮する必要がある。

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