サービスエリアで食べる「メシ」はなぜあんなにうまいのか?
長距離ドライブの途中、SAやドライブインで食べる一杯のラーメンが、なぜ普段よりおいしく感じられるのか。その理由は、空腹や疲労、非日常感、自己決定の満足感など、多面的な要因が絡み合っている。さらに、SAのご当地グルメ戦略は観光消費を促進し、地域経済にも貢献している。本稿では、移動と食事の関係を生理・心理・経済の視点からひも解き、その味わいの本質を探る。
旅先で味覚が変化する理由

「いつも食べているものと同じはずなのに、なぜかおいしい」――このような体験をしたことがあるだろうか。
旅の途中で立ち寄ったサービスエリア(SA)やドライブインで食べるラーメンやカツ丼、カレーライスが、自宅や普段の食事よりもおいしく感じられることは少なくない。
食材や調理法に特別な違いがあるわけではないにもかかわらず、この現象はなぜ起こるのだろうか。
この疑問に対して、多角的な視点から考えてみよう。
移動が味覚に与える影響

移動中の身体は、普段とは異なる状態にある。長時間の運転や移動は、軽度のストレスや疲労をともない、緊張状態が続くと交感神経が優位になる。食事のタイミングで副交感神経に切り替わることにより、リラックスが促進され、これが食事の満足度を高める要因となる。
例えば、登山後の山小屋で食べるカップラーメンが格別においしく感じるのと同様に、ドライブや移動後の食事も、体が求める栄養補給として特別な価値を持つ。
また、移動によって空腹感が増すことも、味覚に影響を与える。車の運転は身体を激しく動かすわけではないが、長時間の集中を必要とするため意外とエネルギーを消費する。この適度な疲労と空腹感が重なることで、普段よりも食事をおいしく感じることがある。
さらに、高速道路のSAやドライブインでは、食事のタイミングが不規則になりやすい。「いつも決まった時間に食べる」のではなく、
「空腹になったタイミングで食べる」
ことができるため、より食事の満足度が高まると考えられる。