駅前商店街が没落し、私たちは「何」を本当に失ってしまったのか? 利便性の陰で消えた「街の色」を考える

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郊外型ショッピングセンターの台頭は利便性向上に寄与する一方、地域の個性や商店街の役割を失わせた。駅前商店街が衰退し、車社会が進行する中で、私たちはどんなものを得て、何を失ったのか。新たな都市のあり方を考える時が来ている。

商店街の「見守り機能」消失

寂れた商店街のイメージ(画像:写真AC)
寂れた商店街のイメージ(画像:写真AC)

 駅前商店街には、もうひとつ重要な役割があった。それは、地域コミュニティーの中心的な存在であったことだ。

 商店街では、店主と常連客が顔見知りであることが多く、買い物を通じて自然と会話が生まれる場でもあった。

「おばあちゃん、今日はおまけしとくよ」
「この魚、新鮮だからおすすめだよ」
「最近、孫が生まれたんだって?」

といった何気ないやり取りが、地域の絆を育んでいた。

 しかし、郊外型ショッピングセンターでは、こうした人間関係が生まれることはほとんどない。レジの自動化が進み、店員と客の接触は最小限に抑えられ、買い物は単なる取引として処理されることが多くなった。

 また、買い物のための移動手段も、コミュニティーのあり方を変える要因となった。商店街が賑わっていた時代、人々は徒歩や自転車で買い物に行き、道端で知人と立ち話をすることが日常的だった。しかし、郊外型ショッピングセンターへはほとんどが車で向かうため、他人と会話を交わす機会は格段に減少した。

 この変化がもたらした影響は深刻である。かつて商店街が担っていた

「見守り」

の機能が失われ、高齢者の孤立や地域社会の分断が進行している。買い物は単なる消費活動にとどまらず、人間関係を形成する場でもあったのだ。

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