駅前商店街が没落し、私たちは「何」を本当に失ってしまったのか? 利便性の陰で消えた「街の色」を考える
郊外型ショッピングセンターの台頭は利便性向上に寄与する一方、地域の個性や商店街の役割を失わせた。駅前商店街が衰退し、車社会が進行する中で、私たちはどんなものを得て、何を失ったのか。新たな都市のあり方を考える時が来ている。
歩行文化の喪失と都市の課題

商店街の衰退と郊外型ショッピングセンターの台頭により、私たちの移動の仕方は大きく変わった。
かつて、商店街は人々が「歩く」ことを前提にした買い物の場であった。駅を降りて商店街を歩きながら、自然に気になる店を覗き、「ついでに寄る」という行動が日常的だった。多様な店舗が徒歩圏内に並び、利便性が高かった。
しかし、郊外型ショッピングセンターは車での移動を前提に設計されている。広大な駐車場に車を停め、決まったルートで買い物を済ませるスタイルだ。ここでは偶然の出会いや予期しない発見が生まれる余地が少なく、自由な探索が難しくなった。
都市計画においても、この変化は大きな影響を及ぼしている。郊外型ショッピングセンターの発展とともに、ロードサイドには大型店舗が立ち並び、駅前の空洞化が進行した。歩行者中心の街づくりから、車を中心とした街づくりへとシフトし、「歩く文化」は失われつつある。
その結果、歩行に優れた街が減少し、車を運転できない高齢者や子どもにとって不便な都市環境が生まれている。