旅の醍醐味はハプニング? 計画通りに行かないから面白い…旅情を深める「アクシデントのススメ」とは【リレー連載】現代人にとって旅情とはなにか(5)

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スマートフォンの普及で旅の「目的」達成は容易になったが、その「過程」の偶発性は薄れつつある。アクシデントや予期せぬ発見が旅の記憶を豊かにする一方、効率化が「旅情」を損なう可能性もある。事前情報を抑え、偶然を楽しむ余地を残すことが、現代の旅をより魅力的にする鍵かもしれない。果たして、テクノロジーは旅の本質を変えてしまったのか──。

「目的」だけではない、旅の本質

北陸新幹線(画像:写真AC)
北陸新幹線(画像:写真AC)

 現代社会は効率性と合理性が求められる時代だ。私たちは日々の生活で時間を有効に活用し、成果を最大化することを優先するあまり、心の豊かさや感情の触れあいを犠牲にしがちである。しかし、旅はそんな現実から一時的に解放される貴重な機会を提供してくれる。

 旅情とは、単なる移動や観光にとどまらず、未知の地を踏みしめ、そこで出会う人々や文化、風景と触れ合うことで生まれる深い感情のことだ。旅先での小さな発見や、異なる環境の中で感じる自分自身の変化は、合理性を超えた価値を私たちに与えてくれる。

 このリレー連載「現代人にとって旅情とはなにか」では、現代人がいかにしてこの非合理的な旅情を大切にし、日常生活に取り入れていくことができるのかを探求する。さまざまな視点から旅の魅力をひもとき、心の豊かさを取り戻すヒントを提供することで、読者に新たな旅の楽しみ方を提案したい。これからの連載を通じて、旅の本質に迫り、ともにその価値を再発見していこう。

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「旅情」というものを一言で説明するのは難しいが、旅の楽しみといえば「目的」と「過程」のふたつに分けられるのではないかと思う。

「目的」とは、例えば、見てみたい名所や史跡であったり、食べたいご当地グルメであったり、泊まりたい温泉宿などであり、この「目的」から旅のプランも決められるだろう。

 例えば、福井に旅行することが決まれば、ガイドブックやネットの情報などから、永平寺や東尋坊や恐竜博物館などの行きたいところを決め、越前ガニやソースカツ丼などの食べたいものをあげ、できるだけ多くの「目的」を達成できるようにプランを決めるのが一般的な考え方ではないかと思われる。

 しかし、こうした「目的」をできるだけ多く達成することがよい旅かというと、そうではないと考える人も多いだろう。旅の記憶を思い返してみると、その「目的」に至る道のりのほうをよく覚えていうということもあるかもしれない。

 特に何らかのアクシンデントに巻き込まれてそこにたどり着くのに苦労したケースでは、そのアクシンデントこそが旅の思い出の中心となっているケースも多いのではないだろうか。

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