人はなぜ「スイッチバック」に魅かれるのか? 鉄道ファン歴40年のライターが考えてみた
鉄道ファンのこころをくすぐるスイッチバック。旅客列車で体験できるものは全国に少なくとも「13か所」あるとされている。
旅客列車で体験できるのは「13か所」
いったん停車した列車が再び動き出し、進行方向を変えて力強く坂を登っていく――。
こんな風景が思い浮かぶスイッチバック。それはなぜだろう、旅情をかきたてる。日本の鉄道路線には全国におおむね30か所以上あると言われている。
おおむねと書いたのは、正確な数を記した資料がないからだ。鉄道ファンは精緻なデータを集めることにたけた人が多いのだが、スイッチバックの数に関する資料はなぜか見当たらない。
数が明確ではないのは、まず、貨物専用線などの、旅客がスイッチバックを体験できない路線が多いからだ。
ノンフィクション漫画『鉄子の旅』(小学館)で知られる編集者の江上英樹氏の調査によると、旅客列車で体験できるスイッチバックは全国に少なくとも
「13か所」
あるとされている。
スイッチバックとは何か
一般的なスイッチバックは、急勾配を上ったり降りたりするために建設された折り返し式で、ジグザク運転をともなう線路のことだ。
ところがこれ以外に、平地で列車が方向転換をおこなうために折り返し式の線路が敷かれている場合もある。これもスイッチバックに含めるなら、その数はぐんと増える。
論者によっては平地に設けられたものを「都市型スイッチバック」などと呼称する場合もあるが、定着しているとは言い難い。そのため、おおむねスイッチバックは急斜面を超えるためのもの――というのが、一般に普及している考え方だろう。
方向転換だけの場合も「スイッチバックする」といった表現は使われるものの、本来のスイッチバックとは「別物」として認識する人が多い。ただ、鉄道旅行で遭遇すると、そのどちらでも魅力的に感じてしまう。