EV改革を加速させるか? 日本発の新素材「HLMET」が電磁鋼板市場に挑む!

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ネクストコアテクノロジーズが開発した次世代型コア材「HLMET」は、鉄損を従来の10分の1に低減し、高性能モーターの効率を大幅に向上。2025年から量産開始予定で、急成長するEV市場への貢献が期待される。

次世代コア材の革新性

EVのイメージ(画像:Pexels)
EVのイメージ(画像:Pexels)

 ネクストコアテクノロジーズ(京都府宇治市)は、2024年8月末に次世代型の高Bs(飽和磁束密度)低鉄損コア材「HLMET(ヘルメット)」の開発と量産化に成功したと発表した。同社は2022年に設立された新しい企業で、急速に体制を整えながら新素材の製品化を進めている。

 低鉄損コア材とは、鉄損(鉄によるエネルギー損失)が少ないコア材(モーターやトランス、発電機などの電磁機器で使用される、磁場を通すための中心部分の材料)を意味する。HLMETは高性能モーター用のモーターコア材として開発され、従来の電磁鋼板よりも効率的なモーター運転を実現する。

 電磁鋼板とは、主に電気機器や電動機のコア部分に使用される特殊な鋼板である。鉄にシリコンを加えて磁性を高め、磁束が通りやすくなる特性を持っており、これによりモーターやトランス、発電機など、電磁誘導を利用する機器にとって不可欠な素材となっている。電磁鋼板の主な特徴は次のとおりだ。

・高い透磁率:磁束が通りやすく、電磁エネルギーの効率的な変換が可能。
・鉄損の低減:ヒステリシス損や渦電流損を抑え、モーターや変圧器の効率を向上させる。
・薄さと加工のしやすさ:薄い板状で加工しやすく、モーターコアなどの部品に適している。

特に電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)のモーター、トランス、発電機などに使用され、これらの性能向上に大きく寄与している。

鉄損10分の1、次世代コア材

電磁鋼板(画像:JFEスチール)
電磁鋼板(画像:JFEスチール)

 新素材であるHLMETは、従来の電磁鋼板とほぼ同じ飽和磁束密度を保持しつつ、鉄損が従来の10分の1以下にまで低減しており、モーターの損失を大幅に減らし、高性能化を実現できる。

 これまでもHLMETに似た特性を持つ鋼板素材は開発されていたが、その高い硬度が加工性を悪化させ、量産には向かないという課題があった。しかし、HLMETは薄板の打ち抜き加工が容易になり、量産に適した素材として実用化されている点が革新的だ。

 ネクストコアテクノロジーズは、2025年から製品向けの素材として供給を開始する予定で、意欲的な計画を立てている。この急速な体制整備には、EVやHVのモーター部品として、モーターコア用素材に対する高い需要があることが背景にあると考えられる。

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