「夜行新幹線」は実現できるか? 高速バスとの競合、貨物新幹線との連携! 可能性と課題を考える【連載】夜行列車現実論(5)
夜行列車再興の経済的可能性
夜行列車は、かつて多くの人に利用されていた移動手段だ。寝台車を使った快適な移動や、昼間の時間を有効に使える利点があるものの、新幹線や高速バス、格安航空の普及でその存在感が薄れてきた。
本連載「夜行列車現実論」では、感傷やノスタルジーを排して、経済的な合理性や社会的課題をもとに夜行列車の可能性を考える。収益性や効率化を復活のカギとして探り、未来のモビリティの選択肢として夜行列車がどう再び輝けるかを考えていく。
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かつて、在来線の夜行列車は非常に人気があった。代表的なものには、東京と西鹿児島を結ぶ寝台特急「富士」や「はやぶさ」があり、これらはそれぞれ日豊本線と鹿児島本線を経由していた。
富士は全走行距離が1574.2kmで、1日かけて走り続けるダイヤだった。東海道・山陽新幹線が全通しても、夜に寝たままで乗り換えなしに目的地に直通できる寝台列車は独特の支持を受けていた。
1988(昭和63)年に青函トンネルが開通した後は、北海道への寝台列車も登場し、
・北斗星
・トワイライトエクスプレス
・カシオペア
などの高級寝台列車が人気を集めていた。しかし、
・夜行高速バス網の拡充
・格安航空の登場
・寝台客車の老朽化
により、ブルートレインなどの客車型寝台列車は衰退していった。現在では、出雲や瀬戸のように、サンライズ寝台列車が需要の高い区間で運行されているだけだ。サンライズは、人気が高く、チケットを手配するのが難しい車両となっている。
こうした状況やインバウンド需要による出張費の高騰を考えると、夜行列車での移動には今も意味があるのではないかと思う。特に、
「夜行新幹線」
を導入できないのかと、筆者(北條慶太、交通経済ライター)は常に考えている。ここでは、そんな夜行新幹線について再考してみたい。