関西本線「名古屋~伊賀上野」の直通列車! 観光と需要掘り起こしで再生なるか? 過去の栄光を取り戻す挑戦に迫る
危機脱却へ、新たな実証運行
一部区間が存続の危機に立たされている関西本線で、年明けに名古屋~伊賀上野間の直通列車が運行する。危機脱却に向け、潜在需要掘り起こしや観光客取り込みを狙った実証運行だ。
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奈良盆地を走ってきた8両編成の大和路快速が終点となる京都府木津川市のJR加茂駅に入る。路線としての関西本線は続くが、加茂駅以東非電化の単線区間。隣のホームで待つワンマン運転の気動車に乗り換え、三重県亀山市のJR亀山駅へ向かう。しばらくすると山あいに入り、車窓から見える景色が一変した。
京都府の南部に位置する笠置町、南山城村にある途中駅のホームは、名阪間の急行がかつて走っていた関係で1~2両編成に似つかわしくない長さだが、乗降客はわずか。やがて気動車は伊賀地方の中心都市・三重県伊賀市の伊賀上野駅に到着する。それほど混雑していない車内から乗客の大半が下車し、伊賀上野駅に乗り入れる伊賀鉄道で伊賀市中心部へ向かった。
伊賀市の島ヶ原駅から関西本線の列車に乗車した70代の女性は、伊賀市中心部の病院へ通う途中。帰りにイオンタウンへ寄って昼の弁当を買って帰るという。
「これがひとり暮らしのささやかな楽しみ」
と笑った。
電化複線化から取り残された亀山~加茂間
関西本線は名古屋市中村区の名古屋駅から大阪市浪速区のJR難波駅を結ぶ174.9km。現在のルートになった20世紀初めには東海道本線と旅客を競い合う名阪間の大動脈だったが、
・東海道本線の全線電化
・東海道新幹線の開通
で名阪間輸送の表舞台から退くことを余儀なくされた。
名古屋駅から亀山駅まではJR東海が運行する名古屋近郊路線、加茂駅からJR難波駅まではJR西日本の大阪近郊路線として電化複線化した。しかし、JR西日本が運行する中間部の亀山~加茂間61kmは電化から取り残され、日中
「1時間に1本」
ほどのダイヤで、普通列車しか走らない。山あいの単線区間を1~2両編成で走る姿はまさにローカル線だ。
1km当たりの1日平均輸送人員を示す輸送密度は1987(昭和62)年度に4294人あったが、沿線の人口減少と車社会の進行で2023年度は
「942人」(78%減)
まで落ち込んだ。国土交通省の有識者会議が2022年に提言した路線見直し対象の輸送密度1000人未満に該当する。
三重県や伊賀市など沿線の地方自治体は利用促進に努めているが、目に見えた効果は出ていない。そこで、三重県とJR西日本などが企画したのが、
「名古屋~伊賀上野間の直通列車」
だ。