地域密着の理念崩壊? JRダイヤ改正で減便・減車・無人化、もはやホンネは「在来線に乗らないで」なのか?
JR東日本の花輪線では2019年に67%の利用者減少が見られる一方、同時期に人口減少率は17%にとどまる。民間鉄道や第三セクターが逆に利用者数を伸ばす一方で、JRはサービスの切り捨てを強化し、地域密着の理念は崩壊した。
民鉄・第三セクターでは利用者増加も
極端な例だけ取り上げたのではないかとの疑問があるかもしれないが、研究者の報告でも同様の結果が示されている。
例えば大津賀柚花氏・中川大氏(富山大学)は学会報告(土木計画学研究・講演集,2022年6月)で、JR・中小民鉄・第三セクターの148区間について網羅的に分析している。やはりJRでは輸送密度が低下している区間が多いのに対して、中小民鉄・第三セクターでは増加している区間が多いと指摘している。
参考までに民鉄・第三セクターの例も挙げる。上図は福井県の福井鉄道(民鉄)とえちぜん鉄道(第三セクター)である。なおえちぜん鉄道は、前身の京福電鉄が連続大事故を起こして撤退した後を受けて2003(平成15)年に発足しているため、乗車人員の変化率は2010年からとしている。いずれにしても沿線人口・高校生・従業者数が減っているのに対して乗車人員は伸びており、JR各社とは様相が異なる。
筆者の以前の記事で指摘したように、えちぜん鉄道では駅トイレの整備に力を入れるなど、日常の利用者を大切にするコンセプトのもとでコロナ以前よりも利用者増加を達成している。福井鉄道は、えちぜん鉄道との共同プロジェクトで相互直通運転を実現し乗車人員が延びている。
これに対して最近のJRは、ダイヤ改正のたびに
・減便
・減車
・無人化
を繰り返し、トイレや待合室から、さらには窓口の廃止まで進め
「在来線にはできるだけ乗らないでくれ」
といわんばかりのサービス切り捨てを強行している。JR発足時の「地域密着」の理念は完全に破綻した形だ。