「電車アイコン」の人は過激派?穏健派? 批判意見ばかりのSNS、結局愛情と誹謗中傷は表裏一体なのか

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SNS上の誹謗中傷が深刻化し、社会問題として注目されている。SNS利用者の約65%が他者に対する攻撃的な投稿を目撃し、実際に8%が被害を感じているという。背景には「匿名性」や「集団的影響」などがあり、過度な批判がエスカレートする原因として心理学的な要因も浮かび上がる。誹謗中傷を防ぐためには、投稿時の注意深さや、攻撃的コメントを制限する仕組みの導入が必要だ。

支えようとする思いが誹謗中傷につながる

投影同一視を提唱した精神分析医メラニー・クライン(画像:Douglas Glass)
投影同一視を提唱した精神分析医メラニー・クライン(画像:Douglas Glass)

 この投影同一視から過度な批判に至るメカニズムはどのようなものか。

 例えば、Aがある有名人Bをわが子のように支えたい愛情にも似た思いが根底にあり、「有名人Bは私が支えなければならない」と考えるようになっているとする。するとAはBの成功のために、厳しい批判や助言を行い、Bをコントロールしようとするとなるのだ。

 この場合、Aは自分の投稿が誹謗中傷だと思っておらず、「正義感」や相手を操りたい気持ちなどから過度な批判を投稿したと考えられる。

 他にも、AはBに対して憧れると同時にねたましい気持ちがあったとする。Aは不安や不快感を低減させるため、Bに

「否定されているような気分になる人もいることがわからないのか、この投稿はあまりにも不適切だ」

など攻撃的な批判と同時に、自身の発言を正当化して不安感を減少させようとするのだ。

 この場合、AはBを利用して自分の不安や悪感情を排除したと考えられる。このように、相手をコントロールして不快な感情体験から自分を防衛する投影同一視の働きにより、過度な批判・論評をしてしまうことがある。

投稿内容や公開設定を見直して過度な批判を防ぐ

 誹謗中傷や過度な批判を未然に防ぐために、まずは投稿する際、他者を不快にさせる内容は避けるなどの基本的な対策が求められる。特に、

・スポーツ
・政治
・宗教
・スキャンダル
・特定の趣味

などへの言及は十分な慎重さが必要だ。これらのテーマは、感情的な反応を引き起こすことが多く、強い批判や誹謗中傷につながる可能性が高い。

 ちなみに、

・電車のアイコンをSNSで使っている人
・電車に関する投稿

は、

「攻撃性が低い」

という研究があり、興味深い(田中智大、清雄一、田原康之、大須賀昭彦『Twitterにおけるアイコン画像と攻撃ツイートの関連性』電気通信大学情報理工学域)。

 さらに、批判する人が集団となり過激化することを防ぐため、投稿にコメントできる者を制限したり、不適切なコメントを通報して非表示にしたりすることも効果的である。

 コメントや投稿記事の非表示・削除要請が受理された場合、本人がよろしくないコメントであったと自覚できる材料になるだろう。このようなアプローチによって、自己防衛だけでなくユーザーに対する情報モラルやリテラシー向上のための啓発活動にもつながる。

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