「ロシアにはもう行かない」 各国コンテナ船が相次いで航路を停止、混乱はいつまで続くのか?

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ロシアへの制裁品目の追加や国際決済からの排除で、混乱が続いている。ロシア発着のすべてのコンテナ取り扱いを停止した企業もある。

各国の規制適用を巡る動き

日本郵船のウェブサイト(画像:日本郵船)
日本郵船のウェブサイト(画像:日本郵船)

 輸送中のコンテナは海上や積み替え港では、ロシア関連の制裁規制が適用されるかどうかを確認するため調査が行われている。

 特定の貨物に制裁措置が適用された場合は、同社のカスタマーサービスが荷送り人と連絡を取り、積地港への返送を手配する。

 ウクライナとロシアに運ばれるはずだった貨物は、ルーマニア、ブルガリア、トルコなど黒海内のさまざまな港で荷降ろしされる。

 日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船3社が出資するオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)、台湾船社エバーグリーン、陽明海運は、ロシアのノボロシースクとサンクトペテルブルグを発着する貨物のブッキングを停止。

 韓国船社のHMMは、極東ロシアのボストチヌイやウラジオストクを発着する貨物の輸送を受け付けなくなった。

制裁がコンテナ輸送にも波及

ドイツのハンブルク(画像:(C)Google)
ドイツのハンブルク(画像:(C)Google)

 コンテナ船社がロシア向けの貨物輸送を停止した背景には、同地域が経済活動を行う上で非常に不安定な状態になっていることが上げられる。黒海では貨物船が攻撃に巻き込まれており、安定的な航行のリスクも大きくのしかかっている。

 すでにSWIFT(国際銀行間通信協会)は米国、カナダ、EUの求めに応じ、国際的な送金業務で必要なシステムからロシアの7銀行を排除した。これらの銀行が過半数以上を持つロシアの子会社も対象となっており、指定された銀行はSWIFTを利用した送金・決済が不可能になった。

 EUはロシアからの鉄鋼製品の輸入を禁止するとともに、高級車や宝飾品の輸出を禁止。さらに軍事産業の強化につながるおそれがあるとして、航空・宇宙分野での輸出制限を拡大している。

 こうした制裁品目の追加や国際決済からの排除は、貨物輸送の混雑と混乱を招いた。

 例えば、ロシア発着のすべてのコンテナ取り扱いを停止したドイツ・ハンブルク港は、ロシアの輸出入にとって最も重要な拠点のひとつで、2021年は33万7000TEU(TEUは20フィートコンテナ換算)のロシア向けコンテナを取り扱っていた。

 ハンブルク港は「ロシア向け貨物の自動通関はすべてキャンセルされている」と説明。

「制裁リストに含まれている貨物は、もはや輸出通関を受けることができない。それ以外の貨物は引き続き引き渡される可能性があるが、この差別化された手続きは、ロシアへの輸出貨物をITで処理するのではなく、税関職員が個別にチェックしなければならないことを意味し、当然ながらより多くの時間がかかることになる」

との認識を示している。実際、海上交通だけでなく、鉄道やトラックなどの交通にも影響が出てきているという。

 マースクは、

「サプライチェーンの混乱を最小限に抑え、港や停泊地の世界的な混雑に拍車をかけないことが重要」

とし、顧客に対してウクライナとロシア発着のブッキングについて、仕向け地変更(COD)サービスやキャンセル料の無料化といったことを提案している。

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