鉄道会社も限界か? 一向に改善しない「撮り鉄マナー違反」、警告強化が意味するものとは

キーワード :
,
撮り鉄のマナーが問題視されるなか、危険な撮影行為が多く報告されている。この状況を受けて、鉄道会社は警告文を掲示し、三脚の使用やプライバシー権の尊重が求められている。撮影者は新しいルールを学び、他者との共存を目指す文化を築く必要がある。安全で楽しい撮影を実現するためには、撮り鉄自身の意識改革が急務だ。

実は半世紀前から「禁止」だった?

写真2(画像:豊科ホタカ)
写真2(画像:豊科ホタカ)

 例えば、鉄道ファンに高い人気を誇ったブルートレイン(青い客車の寝台特急の総称)の廃止間際の模様を振り返ってみたい。往年の人気ブルートレインが毎年のように廃止されていくにつれ、撮影者も年々ヒートアップしていった。

 とはいえ、東京~九州を結んだブルートレイン「あさかぜ」「さくら」が廃止された2005(平成17)年の前後までは、まだ横浜駅など主要停車駅で三脚を構える撮り鉄が存在した。ところが撮影者が増えたからだろう、2008年のブルートレイン「銀河」(東京~大阪間)廃止の頃には、駅では「三脚・脚立禁止」のアナウンスも聞かれるようになった。一方で、東北や北海道方面へ向かうブルートレインが発着した上野駅では、もう少し後、2010年代の前半頃まで、ホーム上での三脚使用が見られた。

 もとより、これらは駅側が「やめるよう注意しなかった」だけであって、使用を許可していたわけではない。かなり古い資料になるが、1978(昭和53)年10月号の雑誌「鉄道ファン」に、既に当時の国鉄が「ホームでの三脚使用」は

「厳禁」

としていたことが記されている。公式には、半世紀近くにわたって「三脚禁止」なのである。

 このことが明示されるようになったのは、おおむね上記の時期といえる。一部の駅では、より早い時期(2000年代半ば頃)から「三脚禁止」の掲示を出していた例もある。

「以前は三脚を使っても駅員に何もいわれなかった」

といいたい撮り鉄もいるだろう。しかし、禁止されているかどうかでなく、列車の運行に与えるリスクを考えれば、鉄道用地内での三脚使用は避けなければならない。加えて、SNSの普及などを背景に「撮り鉄人口」の裾野が急拡大した近年にあっては、黙認の余地はもはやない。

「写真2」は、熊本・鹿児島両県を結ぶ第三セクター鉄道の肥薩おれんじ鉄道の各駅に張り出されている掲示、「写真3」(次ページ参照)は江ノ島電鉄(江ノ電)の駅の掲示である。いずれも、三脚や一脚、脚立などの使用を禁じている。全国共通の「現代の撮り鉄ルール」と考えていいだろう。これが、現在の撮り鉄に必要なアップデートのひとつである。

全てのコメントを見る