なぜ運送業界で「ドライバー不足」が続いているのか? 自動運転が進んでもこの問題が解決しない本当の理由

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2024年の働き方改革により、運送業界は大きな転換点を迎えた。労働時間の上限が960時間に規制されたことで、ドライバーの労働量が減り、求人が強化されている。しかし、深刻な人手不足が続いている。トラック運送事業者の99%は中小企業で、慢性的な人手不足に直面し、賃金や労働時間の改善も進んでいない。収益の向上が難しい中で、業界の効率化も進まないため、今後の影響に注目が必要だ。

求人強化も人手不足

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 2024年は運送業界にとって大きな転換点だ。

 この年から働き方改革の一環として、運送業界にも時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用された。

 そのため、ひとり当たりのドライバーが担える労働量が減少すると予想されており、各事業者は求人を強化している。

 しかし、どの会社も人手の確保に苦労している。では、なぜこのような事態に至ったのだろうか。ここでは、経済情勢の変化と働き方改革の関係について考えてみる。

19兆円超えの営業収益

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 2024年の働き方改革を迎えるまで、運送事業者はどのような状況にあったのだろうか。結論からいえば、トラック運送事業者は急激な増加を経て、現在は増減を繰り返す状況にある。

 国土交通白書によると、1990(平成2)年の規制緩和以降、トラック運送事業者の数は2005年頃まで増加を続けていたが、以降はほぼ横ばいで推移している。事業者数の減少も見られるが、増減が繰り返されているため、全体としては大きな変化はない。

 例えば、2007年の事業者数は6万3122だったが、2023年には6万3127となっている。この間、6万2000と6万3000の間を行き来しているのが実情だ。新規参入と退出があるものの、2007年以降、トラック運送事業者の数はほぼ横ばいで推移している。

 一方で、トラック運送事業の営業収益は2018年に19兆3576億円に達している。2011年までは14兆円台だったものが、急激に増加した。これはネット通販事業者の増加にともない、小口貨物の宅配が増えたことが影響していると考えられている。

 1990年代以降、経済が拡大から現状維持へと転換していくなかで、トラック運送事業者の輸送トンキロ数(運ばれた貨物の重量(トン)と、その貨物が運ばれた距離(キロメートル)を掛け合わせたもの)はコロナ禍を除けばほぼ横ばいだった。最近では、トラック輸送から鉄道や船舶へのモーダルシフトが政策的に進められているが、内航海運や鉄道による輸送量にはほとんど変化が見られない。

 これまでの2000年代の運送事業者の状況を振り返ると、経済規模が変わらないなかで事業者数にもほぼ変化がないという業界の動向が続いてきたといえる。そこに大きな変化をもたらしたのが、コロナ禍と2024年の働き方改革だろう。

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