トイレ撤去で信頼失墜? JRの“切り捨て体質”が招く鉄道危機、利用者軽視が招くトイレ行列の実態とは?
鉄道利用者の「トイレ不安」は高齢者や障害者にとって深刻な問題だ。JR各社が待合室やトイレの撤去を進めるなか、福井県のえちぜん鉄道は充実した設備で支持を集めている。需要に対して供給不足が顕著で、特に女性用トイレは男性用の3倍必要といわれている。
鉄道とトイレ

ふだん健康な人でも電車の乗車中にトイレに行きたくなり困った経験が何回かはあるだろう。
新幹線や特急では車内にトイレがあるが待ち行列ができていることも少なくない。汚さないように使おうという意識はあっても揺れるのでうまくゆかないこともある。
これが満員の通勤電車となるとさらに深刻だ。早く駅に着いてトイレに直行したいと焦るときに限って
「非常ボタンが押されました」
などと電車が止まったりする。ようやく駅に着いてトイレに向かうとそこでまた行列ということもよくある。
進化する列車トイレ技術

ところで日本の鉄道は世界的に「安全・正確」で評価が高いが、列車トイレ自体は世界最優秀といえる。かつての列車トイレと洗面所は、「開放式」すなわち排せつ物や洗浄水を排水管からそのまま線路に放流する方式で「黄害」と指摘されていた。昭和の世代なら
「駅に停車中は使用しないでください」
「北陸トンネル内では使用しないでください」
などの表示を記憶しているかもしれない。海外の先進国でも「開放式」がほとんどだった。しかしその後に技術的な改良が重ねられ、2000年代初頭までに日本の列車トイレはJR・民鉄を通じてローカル線の隅々までも
「閉鎖式」
すなわち外部に放流せず車両基地で集中処理する方式に移行したことは世界的にも高く評価される。
こうした経緯が清水洽氏の『列車トイレの世界』(丸善出版)という本にまとめられているが、関係者だけでなく一般の人向けの本になるくらい重要なテーマであるともいえる。