幹線道路沿いに住むと「不妊リスク」が高まる? 英国研究が明らかにした、クルマ由来「PM2.5」の笑えない影響とは

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クルマ由来のPM2.5は健康に深刻な影響を与える。デンマークの研究によると、PM2.5に長期間さらされることで、男性の不妊リスクが24%増加し、女性には交通騒音が影響を与えることがわかっている。また、EVの増加によって摩耗が進み、PM2.5が増加している。さらに、街路樹がPM2.5を37%減少させる可能性があるため、環境政策の重要性が改めて浮き彫りになっている。

VR技術で守る都市の安全

論文「Evaluating exposure to vehicle pollutants using physics-informed immersive reality models(物理現象を考慮した没入型リアリティーモデルを使用した、車両汚染物質への暴露評価)」(画像:Royal Society Open Science)
論文「Evaluating exposure to vehicle pollutants using physics-informed immersive reality models(物理現象を考慮した没入型リアリティーモデルを使用した、車両汚染物質への暴露評価)」(画像:Royal Society Open Science)

 PM2.5は男性の不妊リスクだけでなく、心臓病やぜんそく、低出生体重などとも関連している。また、土壌や水に拡散し、動物や魚に影響を与えることも懸念されている。PM2.5は広い意味での

「環境ホルモン」

であり、生物の内分泌をかく乱する物質として知られている。

 現在の社会活動では、残念ながらPM2.5の発生を完全に止めることはできない。そのため、できるだけPM2.5に接触しない生活が求められている。PM2.5濃度が高い場所では、PM2.5対応のマスクの着用も検討すべきだろう。

 PM2.5にさらされないためには、他にどのような対策が考えられるだろうか。目に見えないPM2.5を“可視化”し、その挙動を理解することで暴露を回避できることが最新の研究から示されている。

 英バーミンガム大学をはじめとする研究チームが、2024年9月に「Royal Society Open Science」で発表した研究では、物理学に基づいた仮想現実(VR)シミュレーションを体験することで、歩行者や自転車利用者が排ガス以外の有害な自動車排出物にさらされるリスクを軽減できる可能性があることが示唆されている。

 流体力学モデルを使用して、肉眼では見えない車両からの微粒子状物質の放出と拡散をシミュレートし、粒子が最もまん延するタイミングや、都市空間をより注意深く安全に移動する方法が示されている。

 例えば、ブレーキをかけて停止したクルマの後方付近にいると、より多くのPM2.5を浴びることになる。残念ながら、ほとんどのバス停、横断歩道、自転車レーンがこうした暴露ゾーン内にあり、これらの場所を徒歩や自転車で通行する場合には、マスクなどの対策が必要となる。また、この研究は都市空間の再設計における重要なデータにもなるだろう。

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