ハンマーで叩き壊される日本車! 80年代のジャパン・バッシングと、白人貧困層出身「副大統領候補」の時代的因縁
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トランプ氏が副大統領候補に指名したJ.D.バンス氏は、オハイオ州出身の白人労働者階級で、ラストベルトの象徴的存在である。彼の起用は、トランプ氏の再選戦略において重要な役割を果たすと見られ、特に過去の選挙で苦戦したラストベルトでの支持拡大が期待される。
ラストベルトの現実と教訓

1980年代は、日本の自動車の輸出台数が増え、日米貿易摩擦が激化した時期だ。1970年代のオイルショック以降、米国では安価で燃費のよい日本車の需要が急増し、その結果、米国の自動車産業の業績が悪化した。少し年齢が上の人なら、日本車をハンマーでたたき壊すジャパンバッシングの映像に驚いた記憶があるかもしれない。
以降、自動車メーカーは、日本政府と対米自動車輸出台数の
「自主規制」
を行い、さらには米国での現地生産を加速することとなった。
1984年生まれのバンス氏には、衰退する米国製造業、没落する白人労働者階級のなかで多感な時期を過ごし、ラストベルトのリアルを見てきたというバックボーンがある。
しかしながら、米国の製造業が衰退したのは製品の魅力の相対的な低下もあるのだろうが、企業の経済活動の基本が
「安く作って、高く売る」
ことであり、米国内で製品を安く作れなくなった面もある。「安く作って、高く売る」原則がある以上、米国ではなく、人件費やエネルギー調達費用など製造コストの安い海外に製造業が出ていくのは自然な流れである。
話を少しそれるが、日本も製造業が安く作れる海外に出ていき、製造業を支えてきた中産階級がいなくなり、安価な海外製品であふれているのは、ラストベルトがたどってきた道となんら変わりはない。