京成モーニング・イブニングライナーの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない【リレー連載】偏愛の小部屋(6)

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京成電鉄のモーニングライナー・イブニングライナーは、リーズナブルな料金で特急車両を提供し、充実した設備で快適な移動を実現。定期券も利用しやすく、仕事と生活のバランスを支える便利な選択肢だ。

通勤ライナーの進化

イブニングライナーに充当されたKENTY SKYLINER(画像:大塚良治)
イブニングライナーに充当されたKENTY SKYLINER(画像:大塚良治)

 朝夕のラッシュアワーの混雑した列車には誰もがうんざりしている。特に首都圏では特にひどいことから、平成時代以前から、特急や専用車両などを中心とした通勤客向けの着席列車(通勤ライナー)や着席サービスが設定されてきた。

 しかし、専用車両を導入するというハードルがあったため、平成時代に入ってからは、そうした車両を導入した路線以外で、新サービスの導入にあまり勢いが見られなかった。1993(平成5)年12月6日に運行を開始した西武新宿線「小江戸」は、朝夕は通勤客を中心に満席となるが、日中の乗車率の課題は依然として残っている。

 潮目が変わったのは、2008年6月14日に東武東上線「TJライナー」が営業運転を開始してからである。TJライナーは、LCカーを使用することで誕生した。LCカーは朝夕は通勤ライナーや着席サービスとして活用し、日中時間帯は一般列車として使用することが可能で、車両の効率的な利用へ道を開いた。

 TJライナーがデビューする前は、沿線に有名な観光地がほとんどない路線では、通勤ライナーや着席サービスのために専用車両を導入する場合、朝夕のピーク時には車両を車庫で「昼寝」させるか、乗客が少ないことを見越して日中も運行するかのどちらかしか選択肢がなかった。しかし、TJライナーが“呼び水”となって、

・西武鉄道「S-TRAIN」(東京メトロ線・東急東横線などに直通)、「拝島ライナー」
・京王電鉄「京王ライナー」
・東急電鉄「Qシート」
・東武伊勢崎線/東京メトロ線直通「THライナー」

など、LCカーによる着席列車や着席サービスが相次いで登場した。

快適移動の新基準

ゆったりとした車内で飲食を楽しみながら移動できるのが専用車両の魅力のひとつ(常磐線特急ときわ車内)(画像:大塚良治)
ゆったりとした車内で飲食を楽しみながら移動できるのが専用車両の魅力のひとつ(常磐線特急ときわ車内)(画像:大塚良治)

 しかし、LCカーによる着席列車や着席サービスには残念な点がいくつかある。まず、料金は、専用車両を使用したサービスの料金と大差ないことが多いことである。それに加えて、LCカーによる通勤ライナー・指定席にはゴミ箱が設置されていない点を問題視する意見もある。

 首都圏の私鉄の多くの駅ではゴミ箱が撤去されており、車内で飲食をした後に駅構内でゴミを捨てることも難しい。これでは安心して飲食を楽しめない。

 やはり、個人的にはリクライニングシートや座席背面のテーブル(背面テーブル)、客室ドアと外部を仕切るデッキ、トイレ、ゴミ箱などを備えた特急車両でゆったり飲食を楽しみながら移動したい。充電用コンセントもあればなおよい。

 以上の観点から一押ししたいのが、京成電鉄の

・モーニングライナー
・イブニングライナー

である。モーニングライナーは1985(昭和60)年10月19日に、イブニングライナーは1984年12月1日にそれぞれ運行を開始した、通勤ライナーの

「草分け的存在」

である。特急車両を使用しているにもかかわらず、リーズナブルな料金で利用できる魅力的な列車である。ゴミ箱とトイレも備わっており、安心して飲食を楽しめる。

 これに加えて、本稿では、筆者(大塚良治、経営学者)がモーニングライナー・イブニングライナーを「やばい!」と考える四つのポイントを紹介したい。なお、本稿はJRと大手私鉄を対象としている。

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