日本車はなぜ売れ続けるのか? なぜ強いのか? 厳しい自然環境が育んだ耐久性と信頼性、円安の“追い風”で再考する

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日本の自動車産業は経済への波及効果が大きく、技術革新と長持ちする耐久性によって世界での地位を確立してきた。

競争が生む技術革新

タクシーのイメージ(画像:写真AC)
タクシーのイメージ(画像:写真AC)

 また、ユーザーの声を把握する経路も、おそらくユニークなものだろう。なぜなら、メーカー直販とは異なる販売会社から膨大な情報、ときにはクレームが報告されるからだ。歴史的に見ても、こうした販売会社は地元の有力者や実力者が仕切っていることが多い。

 また、トヨタは個人タクシーやジャパンタクシーなど、タクシー車両の巨大なマーケットを持っている。タクシーの総台数は約24万台といわれ、その約半数(実際はそれ以上だが)からのフィードバックは、実戦でしか得られない。その結果が、トヨタ車の卓越した品質向上と故障率の低さにつながっていることは想像に難くない。

 さらに、トヨタや三菱だけでなく、乗用車メーカーが世界規模で7社も存在していることも、よい意味での競争激化に寄与している。その結果、品質向上や技術革新が急ピッチで研ぎ澄まされている。

 以上のような歴史と環境の積み重ね、そしてマーケットの特殊性が、日本車を今日の地位へと押し上げたと筆者は考える。また、自動車産業は製造品出荷額約70兆円、雇用者数550万人という日本の産業基盤全体を支える産業であることは間違いない。

 そのなかで、「技術革新」の部分に影が差してはいないだろうか。3月に発表された経済産業省の資料によると、BEV時代のカギを握る「全固体電池」の国家予算は2023年に引き続きわずか18億円にとどまる。

 さらに、同資料には「電気自動車用革新型蓄電池開発事業」として24億円が別途計上されているが、合わせても42億円にすぎない。これで中国などの先進国に対抗できるのだろうか。

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