トヨタ「中国資源大手」と協業発表 決断は賢明か愚昧か? 地政学的リスクと経済合理性のバランスを考える

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中国を巡る地政学的リスクへの懸念が高まるなか、トヨタの中国事業強化に懐疑的な見方もあるだろう。しかし、重要なのは経済合理性と地政学的リスクのバランスである。

中国を巡る地政学リスクへの警戒感

3月9日、米国ジョージア州ローマで行われた「投票率アップ集会」で演説するドナルド・トランプ元米大統領(画像:EPA=時事)
3月9日、米国ジョージア州ローマで行われた「投票率アップ集会」で演説するドナルド・トランプ元米大統領(画像:EPA=時事)

 中国を巡る地政学リスクへの懸念が広がるなか、トヨタ自動車のこういった動きに懐疑的な意見も上がるかもしれない。

 キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長は以前から、外国における生産拠点では地政学的リスクが高まっており、時代のニーズに合わせて工場配置などの体制を見直すべきだと発言している。

 また、中国や台湾についても言及し、企業の経済活動が影響を受ける国の生産拠点を放置することはできず、安全な第三国への移転か日本に戻すかのふたつの道しかないとの認識を示した。

 日立製作所の河村芳彦副社長も以前、中国や台湾などを巡る地政学リスクについて懸念を示し、サプライチェーンの拠点を国内や同盟国へ移すことを検討しているとした。

 河村氏は価格重視のサプライチェーンは潮目が変わり、今後は安定性や継続性を重視し、中国との経済関係が深まる東南アジア諸国連合(ASEAN)だけでなく、中国との関係が薄い国々を含め計画を作っていると明らかにした。

 このような経営者たちの懸念は、大手自動車メーカーでも見られる。ホンダは2022年8月、国際的な部品のサプライチェーンを再編し、中国とその他地域のデカップリングを進める方針を打ち出した。マツダも同月、中国経由などで調達する部品への依存度を引き下げるための検討をはじめたことを明らかにした。

 2社の動きは新型コロナなどの要因も影響しているため、地政学リスクにどこまでウエートが置かれていたかはわからない。しかし、冒頭で挙げた半導体覇権競争や経済的威圧など、中国に進出する日本企業の間で地政学リスクへの懸念が広がっていることは間違いない。

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